HOMINIS DIGNITATI
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ひとりじゃない
経済学部経済学科 教授 林 尚志
「今日貧しいと、それゆえ、明日も貧しい」。
これが厳しい現実だ。
豊かでない途上国では働き手として子どもの役割が大きいため、人口は増える。
だが、人口が増え続けると、各人の取り分は逆に減ってしまう。
また、貧しいときほど、今日生きのびるのに精いっぱいで、明日への蓄えができない。
将来に向け投資ができず、永遠に貧困から抜け出せない。
まさに悪循環だ。
ところが、仲間を見つければ、大逆転も起こりうるのだ。
誰もがなんらか強みを持っているという事実は、なんて幸福なことだろう。
深刻な貧困に苦しんでいた東アジアの国々は、「勤勉な労働力は豊富」の
強みを活かし、「治安をよくし、環境を整備し、先進国から人材育成や
技術移転に来てもらおう」と知恵を絞り、
利益を先進国と分かち合いながら、「東アジアの奇跡」を遂げた。
自らの社会や伝統を大切にする、「Asian Values」を守り育てながら。
シンガポール、韓国、台湾、香港が先陣を切った。
タイやマレーシア、中国など出遅れた国々も「後発性の利益」を
実現しつつある。先発者が生み出した資金や技術、ノウハウや
情報を活用してチャンスを広げたわけだ。
仲間と自分の長所を伸ばして、 皆が利益を享受するWIN-WIN
の関係を築くのは夢でないと言える。
足掛け5年いたハワイ・イースト=ウエストセンターの学生寮で、
自炊したカレーをインド人に食べてもらったら、見かけとは違い、
新しい美味と賛辞?を頂戴した。
1年半滞在したシンガポール・東南アジア研究所では、マレー系のおじいさんと親しくなった。
郵便局員だった彼は「ハロン」と自分の名前をカタカナで書いてみせてくれた。
ハリラヤ・プアサという現地の祭りにも誘われ、一緒に練り歩いた。
街全体がにぎやかな飾り付けできらきらし、通りに屋台があふれていた。
濃いピンクの飲み物、鮮やかな緑の水菓子、焼き鳥や魚フライの強烈な匂い、人々の熱気と歓声……
人のそばには仲間と呼ぶべき誰かが必ずいる。