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アメリカの南東部、フロリダにあるウォルト・ディズニー・ワールド®は、広さが山手線内面積の1.5倍もある夢のリゾート。内部は4つのテーマパークと2つのウォーターパークに分かれており、日本館は、各国の文化や歴史を体感できるテーマパーク「エプコット」にあります。日本館のテーマは、「伝統と革新の共存する調和の国・日本」。私が所属する米国三越は、鉄板焼きやお寿司などの日本食、着物の着付けや折り紙の体験など、日本文化を楽しめるレストランとショップの運営を通して、日本が誇る豊かな文化と真心のおもてなしを、世界中から集まるゲストにお伝えしています。
マーチャンダイズ・アシスタントマネージャーとして、ディスプレイ、商品管理といった売り場づくり、ゲストへの対応やクレーム処理、そして三越CRプログラムメンバー(※)の教育も担当しています。
※三越CRプログラム(カルチュラル・リプレゼンタティブ・プログラム)とは、三越が展開する国際文化交流勤務制度。日本で選抜されたメンバーが13ヶ月間、契約社員としてウォルト・ディズニー・ワールド®日本館に勤務し、多くのゲストに日本文化を紹介する。

ゲストとの接客は英語で行いますが、正確さ、わかりやすさはもちろん、相手や場の雰囲気に応じて単語や表現も適切なものを選ぶよう意識しています。そして言葉以上に気を配るのが、お辞儀やご案内する際の所作。たとえば支払いの際にお預かりしたカードを、両手を添えてお渡しするだけで「なんて丁寧なの!」とお褒めいただくこともありますし、笑顔での対応に「You are the happiest person I've ever seen!」とお言葉をいただくこともあります。日本では当たり前のことがゲストの驚きや感動につながるなんて、これ以上嬉しいことはありません。だからこそ、「サービスのプロ」と同時に「日本人のプロ」としての自覚を常に持ち、それに恥じない振る舞いを意識しています。
世界各国のゲストをお迎えするのですから、一律のサービスで通用しないのは当然です。どんな時もゲスト最優先で対応を考えますが、クレームの際はゲストを満足させると同時に、会社の損失を最小限に抑える回答を短時間で決断しなくてはならず、頭を悩ませますね。国ごとに法整備や商慣習は大きく異なるので、時には履き古した下駄を手に、「足が痛いから返金して。」と言われるゲストもいらっしゃいます。もちろんレシートもありません。さて、どうするか。規則では返品時のレシート提示は必須ですが、「レシートがないならお受けできません」という対応では、ゲストの心は離れてしまいます。「長く履いていただいてありがとうございます。鼻緒をもう少し緩めてみましょうか」。言葉の奥にある相手のニーズを理解し、心を込めてご提案すると、ゲストも「これからも愛用するよ」とさらに日本を好きになり、笑顔で帰ってくださいます。これが、日本館がめざす「マジカルモーメント」。クレーム対応は毎回、テストを受けているような感覚ですが、自分の成長を感じられるいい機会でもありますね。

プログラムメンバーは年に2回、ストア配属は24名ずつ受け入れています。日本館に相応しい接客が身につくよう、効果的な教育プログラムの内容を考え、教育し、売り場でもアドバイスを続けます。すべてのキャストメンバーに、頭でなく「心」でサービスを理解してもらえるよう、体験談を伝えたり、私自身が手本となるよう誰よりも元気で丁寧な接客を心掛けていますね。学生から社会人まで、それぞれのキャストメンバーに適した教え方を見い出すのは大変ですが、教育プログラムの内容を活かし、キャストメンバーがゲストを魅了するサービスができた話を伝えに来てくれる時は、大きなやりがいを感じます。
相手の文化や価値観を理解すること。すべてはここからスタートします。先ほどお話したクレームの件をはじめ、たとえばアメリカ人の同僚とも、仕事の進め方や取り組み方で意見が食い違う場合があります。その際、相手のやり方を否定するのではなく、「異なるもの」としてまずは受け入れてみる。その中で自分の立ち位置を見定め、しっかりと意見を発信していくしなやかな強さと、それを楽しむ感覚が大切だと感じます。相手を理解し、相手にも自分を理解してもらう。それが真の相互理解であり、国際交流の第一歩なのではないでしょうか。
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愛知万博が開催された2005年は、ちょうど私が大学を卒業する年だったんです。高校時代から国際交流や国際貢献に興味があり、将来は英語を使って世界中の人々の役に立ちたいと考えていたので、千載一遇のチャンスだと思い、挑戦することに。担当したアフリカ館では、アフリカ人スタッフの通訳のほか、クイズラリーや手づくり館内マップなどの企画づくりにも尽力し、世界から集まる来場者、スタッフと多くの感動を分かち合うことができました。
そうです。私は幼い頃からディズニーが大好きで、毎年家族で東京ディズニーリゾート旅行に出掛けるんですね。その話を同僚にしたら、「国際交流とディズニーが大好きなあなたにピッタリのプログラムがあるよ」と。それで三越CRプログラムのことを知りました。応募したのは、中学校での非常勤講師の契約が終わる頃。面接や英語力をはかる試験を経て、無事参加できると聞いた時は、まさに夢のような気分でした。

プログラムの期間は13ヶ月。渡米直後の45日間でホスピタリティを徹底的に学んだ後、それぞれの部署に配属されます。私が担当したのは、パール売り場でのパフォーマンス販売。水槽の中に散りばめられた真珠貝(アコヤ貝)からお気に入りの貝をゲストに選んでもらい、取り出したパールをお持ち帰りいただいたり、そのパールでジュエリー加工して差し上げるという販売方法です。山場は、貝空ける瞬間。ゲスト一人ひとりとコミュニケーションをとり、楽しいパフォーマンスで気分を最高潮に盛り上げると、真珠の大きさが多少小さめでもゲストは心から喜んでくれました。自分自身が接客を心から楽しんでいたのが伝わったのか、プログラム生の時にアシスタントマネージャーへのお話をいただき、次のステップに進もうと、迷うことなくお受けしました。

プログラム期間中は、40カ国以上から集まる国際プログラム研修生と共同生活を送りました。南山大学にも海外からの留学生はたくさんいましたし、万博でも世界中の人と触れ合いましたから、国際的な環境には慣れていたはずなのですが、共に暮らすとなると話は別。夜中や早朝の電話、使った食器の後片付けなど、些細なトラブルは日常茶飯事です。最初は不機嫌な表情や態度で不満を伝えようとしましたが、それは日本ならではのやり方。国際社会では全く通用しません。しかし相手の何が不満で、どうして欲しいのかを具体的に、論理的に言葉で伝えると、事態は意外なほどあっさりと收拾するのです。解決の糸口は、相手を理解し、自分を理解してもらうこと。グローバルコミュニケーションとは、実は日本の人間関係よりも単純明快なのかも知れません。そして何より、それぞれの「違い」を受入れて、楽しんでしまうことですね。
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第一は、やはり英語の勉強です。私は高校時代に1年間、ニュージーランドに留学していたので、英語力にはある程度の自信を持って南山大学に入学しました。しかし、1年次の授業で、ネイティブの先生に「cheesyな英語はもう卒業しよう」と言われたのです。cheesyとは、「幼稚な」とか「低俗な」という意味。たとえば女性の魅力を表すのでも、「美しい」だけでなく、「清楚だ」「妖艶だ」「凛として」「理知的だ」などいろいろな表現があるだろう、と。「自分の意思を相手に伝える」というこれまでの学習から一歩踏み込み、これからは自らの人格や教養を表現できる単語や表現が必要なのだと気づいた時、目の前に新たな英語のステージが広がったような気がしました。それからはすべての授業を全力でこなし、2年次にはTOEIC®で855点の高スコア!現在の仕事で、あらゆるお客様に、いかなる場面でも自信を持ってサービスできるのは、学生時代に培った英語力のおかげだと感じています。

アメリカを中心とした国際関係です。特に担当の宮川先生がご専門とされる世界大戦中の日米関係を深く学びました。扱う文献や資料はすべて英語のもの。毎回、ゼミの前には資料を読み込み、自分なりの意見や疑問点などを明確にした上で参加しなくてはならず、とにかく準備が大変でした。しかしその分、アメリカや日本をはじめひとつの国の問題を世界的、歴史的な視点から多面的にとらえ、思考する力が備わったのは、国際社会で生きるうえで大きな力になりました。卒業論文では「世界大戦中のディズニーの影響力」をテーマに、軍事や政治にまで影響を与えたディズニーの存在を掘り下げたんですよ。
教職をめざしていたわけではなかったのですが、教員をしている母の勧めで免許を取得しました。結果的に、教員免許があったからこそ期間限定の万博の仕事にも挑戦できましたし、開催後は日本に住む外国人の子どもたちへの日本語指導を通して、教育の面から国際貢献に取り組むことができました。私にとって教員免許は非常に大きな意義と価値がありました。さらに教育心理学や具体的な指導方法など教職課程で学んだ内容は、グローバルなビジネスの場でも通用するものばかり。「最初に伝えたいことは簡潔に言う」「褒める時は仲間の前で、注意する時は一人の時に」などの教育指導方法を、現在のプログラム生の教育にも大いに活用しています。

高校までの私は、クラスの仲間や家族の前では活発な反面、自分の知らない環境に飛び込むことが苦手な、内弁慶な学生でした。しかし南山大学に入学し、先生方の自主性を重んじる学びや、目標を持って努力を重ねる仲間との出会いによって、知らない世界に挑む勇気を持てるようになりました。3年次に、大学で何気なく見つけたポスターを頼りに、ホテルでの2週間のインターンシップに取り組んだのも、高校時代の自分からは想像できない行動です。しかしそこで外国人のお客様のアテンドを任されたことが、万博での仕事をめざすきっかけとなり、現在の仕事につながる源流となったのですから、人生はわかりません。南山大学は、まだ芽さえ出ていなかった私の個性や能力を引き出し、伸ばしてくれた場所。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

あなたは英語が好きですか?たとえ今は勉強が大変でも、大学で学ぶ英語は高校までのスタイルとはまったく別物ですから大丈夫。英語をある程度話せるだけで、自分の世界も可能性も何倍にも広がるので、ぜひ挑戦してみてください。南山大学には、留学や海外研修プログラムに参加するチャンスも豊富に用意されています。三越CRプログラムでもたびたび南山大学の学生を受け入れているのですが、高度な英語力と国際性を活かし、主体的に活動している姿を見るのは先輩としても誇らしい限りです。遥か遠い世界を、手の届く距離まで近づけてくれる。それが南山大学です。世界に広がるネットワークが、あなたの挑戦を楽しみに待っていますよ。
(2012年3月)
2012年3月現在

| みさわ あや | |||
| 三澤 彩 | |||
| 米国三越 マーチャンダイズ・アシスタントマネージャー | |||
| 2005年3月 | 外国語学部 英米学科 | ||
| 2005年3月〜2005年9月 | アテンダントとして愛知万博で勤務 |
| 2005年9月〜2006年3月 | 日本語指導非常勤講師として名古屋市立中学校で勤務 |
| 2006年4月〜2007年3月 | 英語の非常勤講師として名古屋市立中学校で勤務 |
| 2007年4月〜2007年9月 | ディズニーストア名古屋松坂屋店で勤務 |
| 2007年9月〜2008年11月 | 三越CRプログラムに参加し、ウォルト・ディズニー・ワールド®日本館で勤務 |
| 2009年1月〜 | 米国三越のマーチャンダイズ・アシスタントマネージャーとなり、引き続き日本館に勤務するとともに研修生の教育も担当 |