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東日本大震災による被害は、やはり大変なショックでした。震災直後から、「僕にできることは何だろう」と自分自身にずっと問い続けていたんです。でも、何かのスペシャリストというわけではないし、震災直後は現地に行っても役に立てないだろうと思いました。だけど、ただの一人の大学生にもできることはあるはず!と思い、アルバイトをしている大学内のカフェで募金箱を置かせてもらい、現地に義援金を送る活動を始めました。ところが、月日が経つにつれて募金額が減ってきてしまって…。人々の関心の低下を感じると同時に、自分に対しても疑問が浮かんできました。現地に行ったこともないのに、サポートをしようとするのはナンセンスではないか。やはり現地をこの目で見て、自分のできることを見つけ、多くの人に現状を広く伝えたいと思いました。そこで、震災から3ヶ月経って現地も落ち着いてきた6月に、宮城県石巻市へボランティアに行きました。
6月から数ヶ月間、宮城、岩手などの被災地を何度か訪れ、津波の被害を受けて泥まみれになった家屋の清掃などに取り組みました。また、アメリカ留学の経験があったので、語学力を活かして、海外から参加しているボランティアの通訳も引き受けました。

被災地で目の当たりにした光景、そして被害規模は、僕の想像をはるかに超えていました。町全体が魚の腐ったような匂いに覆われ、避難所では支援物資やボランティアの数も減ってきており、一週間お風呂に入れない人々もいて、不自由な生活を余儀なくされていました。なのに、被災者の方々は人としての品格を保ち、わずかな食料でも毎日感謝して生活していたんです。その姿には胸を打たれました。この出来事を決して忘れてはいけない。こうした現状を少しでも多くの人に伝え、改めて東北のことを考え、行動してもらうために何をすればいいんだろう、という想いで頭がいっぱいになりました。ここから「Candle Night Nagoya〜みんなの灯を、東日本に〜」の構想が始まっていきました。
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企画を始めたのは、最初のボランティアから帰ってすぐの7月頃です。まず考えたのは、現地で見聞きしたこと、東北への想いを伝えるツールを探すことでした。より多くの人を集めて、また次の人へと想いをつなげるために、大規模な会場でのイベントを行いたいと思いました。メッセージを伝えるために、キャンドルかイルミネーションのどちらの演出が良いか悩み、来場者が点灯作業に参加できるキャンドルを選びました。

名古屋市は、以前から学生を支援する体制があり、学生のイベント企画を随時受け付けていると聞いていました。それで、頭の中の計画をちゃんとした企画書にまとめて、名古屋市役所の総務局総合調整部総合調整室に持ち込むことにしました。開催は震災のあった3月11日にちなんだ11日。キャンドルなど必要な物品は、自分たちで協賛企業を募って提供してもらい、地元の飲食店にも一口3000円の協賛金を募り、運営費に回すよう考えました。また、イベントを開催することで、行政と学生、協賛企業との連携が生まれ、名古屋の地域活性化にもなるとも思いました。内容をしっかり詰めて名古屋市にプレゼンしました。
企画書を作るのはもちろん、プレゼンも初めての経験でした。先生や先輩にアドバイスをいただきながら完成度を高め、何度もチェックをしてもらったおかげで、説得力のあるものに仕上げることができました。そしてプレゼンの結果、名古屋市の呼び掛けで開催される「NAGOYA 学生EXPO」との共催が決定したんです。「NAGOYA 学生EXPO」とは、「名古屋をもっと好きになろう!」をテーマに様々な企画を行う、名古屋を中心とした東海地区の学生による合同大学祭。2011年が初めての開催で、「Candle Night Nagoya〜みんなの灯を、東日本に〜」は、そのフィナーレを飾るイベントとして実現することになりました。


南山大学はもちろん、フリーペーパーや口コミなどで他大学にも積極的に声をかけ、一緒にやる仲間を募集しました。専用ホームページを作って情報を発信するなどして、様々な大学の学生21名がスタッフとして集まり、各自が得意分野を担当して、手分けして準備に当たることにしました。最大の問題は、莫大な数のキャンドルと、メッセージを書き入れてそのキャンドルを覆うカップをどう調達するかです。インターネットで東北支援を表明している企業を探して足を運んだところ、キャンドルメーカーと特殊和紙メーカーに協力いただけることになりました。なんと、キャンドルと和紙を無償で提供してくれたんです。他にも地元の飲食店へ協賛のお願いに行ったり、キャンドルの土台となるアルミ缶燈籠の製作や、当日手伝ってもらえるボランティアを募集したりと、各自が準備に奔走しました。

「NAGOYA 学生EXPO」は、名古屋の中心部にあるテレビ塔を会場に、2011年12月10日〜11日の2日間に渡って開催されました。10日にはキャンドルを、日本列島の形や「みんなの灯を東日本に」などの文字が浮かび上がるように並べました。その数は25,284本。震災の死者と行方不明者、負傷者を合わせた数と同じ(※2011.12.11時点)です。そして11日の夕刻、「Candle Night Nagoya」がスタート。すべてのキャンドルに、ボランティアや来場者の手で火が灯されていきました。キャンドルを覆うカップには東北へのメッセージが書かれています。テレビ塔の周辺できらめくキャンドルの灯りに、多くの人たちが見入りながら、祈りを捧げてくれているようでした。

ステージでは東北にボランティアに行った学生を中心に、被災地の現状を伝えるトークショーを行いました。名古屋市の河村たかし市長も交え、行政の立場からどんな支援活動をしているかなどの話もしていただきました。また、書道家によるライブ書道、アコースティック音楽ライブなどで東北へのメッセージを伝えてもらいました。東北の物産展など、会場のどこでも東北のことを考えてもらえるように様々な催しを用意しました。

2日間で来場者は5000人にも達し、テレビや新聞など多くのメディアに取り上げられました。当日、僕たちの作業を見ている人が、「私にもできることはない?」と声をかけて下さるなど、その場で手伝いを申し出てくれる方も多く、参加ボランティアは150名を超えました。会社ぐるみで協力してくれていた協賛企業も、社長自らボランティアに参加してくれていてビックリ。「来て当然でしょう」と笑顔で言われ、温かな気持ちに感激しました。キャンドルの点灯は夜8時までで、その後は莫大な数のキャンドルの撤去作業です。寒い中、スタッフは徹夜で作業を続けましたが、みんなの満足そうな顔が印象的で、成功して本当によかったと思いました。
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来場者からは「感動しました」「私もできることを見つけます」など多くの声をもらいました。東北の方からもホームページに感想をいただき、やってよかった!と思いました。でも、僕自身は満足はしていないんです。達成感はありましたが、もっとできるはずだった、とも思います。その理由のひとつは、スタッフの数が足りなかったこと。それに加え、僕自身、スタッフへの伝達や準備不足で迷惑をかけたり、スケジュールの管理、時間のディレクションなどが不十分で、メディアの取材対応に追われてしまいました。それでも、周りの多くの人に支えられていたからこそ、やり遂げることができたと感謝しています。

「Candle Night Nagoya〜みんなの灯を、東日本に〜」は、震災からちょうど一年が経つ2012年3月11日に、岩手県の陸前高田市での開催が実現します。この活動は「Candle Night Nippon〜みんなの灯を、東日本に〜」として後輩たちが受け継いでくれて、今後も、日本各地で開催されると思います。他にも人に感動を与えられるような企画やサポートをどんどんしていきたい。地元の名古屋に愛着を感じているので、ここを拠点に、今後も名古屋の地域活性化に貢献できたらと思っています。

最初から無理と考えず、何事にもチャレンジして、その行動に意味を見出して欲しい。実は、高校生の頃の僕はとても内気で、勉強ばっかりしているタイプでした。がらっと変わったのは、南山大学に進学してから。いろんな価値観や考え方の人に会い、自分から動かないと何も変わらないと気づき、積極的になりました。皆さんに、一番伝えたい事は、「とりあえずチャレンジしてみること」です。一歩踏み出すのは勇気がいるけど、実はその一歩は、自分が思うより大変なことじゃない。踏み出してしまえば、自ずと歩き出せます。さあ、皆さんも一歩を踏み出してみて下さい。
(2012年2月)

※外部サイト(「Candle Night Nippon」オフィシャルウェブサイト)へ移動します。
2012年2月現在

| つぼい たくま | ||
| 坪井 琢磨 | ||
| 経営学部 経営学科 | ||
| 2008年3月 | 南山高等学校男子部卒業 |
| 2008年8月 | Embry-Riddle Aeronautical Language Institue(アメリカ) 修了 |
| 2008年9月 | Embry-Riddle Aeronautical University Aeronautical Science Major(アメリカ)入学 |
| 2009年4月 | 南山大学経営学部経営学科入学 |
| 2011年3月11日 | 東日本大震災発生、義援金募集活動を開始 |
| 2011年6月 | 宮城県石巻市にてボランティア活動を行う |
| 2011年6月〜10月 | 宮城県東松島市、岩手県陸前高田市にてボランティア活動を行う |
| 2011年12月11日 | 名古屋にて『Candle NIght Nagoya 〜みんなの灯を、東日本に〜』開催 |
| 2012年3月11日 | 陸前高田市内および名古屋市内にて『Candle Night Nippon 〜みんなの灯を、東日本に〜』開催予定 |