


法曹に対する漠然とした憧れは高校時代からあり、その憧れから大学は法学部に進みました。大学生になって具体的に法律学と日本の法制度を学ぶにつれて、法律のおもしろさと奥深さを知りました。1年次で裁判所見学に行ったとき、弁護士の方から裁判に関する解説を受け、法のプロフェッショナルにしかできない社会貢献ができ、かつ一生やりがいを持って働くことができる「法曹」という職業が、さらに魅力的に思えるようになりました。2年次の頃に新司法試験制度とそれに伴う法科大学院制度の発足を具体的に知り、「自分でも法曹になれるかもしれない。今がチャンスだ!挑戦してみよう!」と考えるようになりました。
南山大学の法学部では、1年次からゼミ(演習)に所属します。私も4年間ゼミに所属しましたが、ゼミでの法律学に関する議論の経験により、法的な思考に基づいた体系立った説明が自然とできるようになったと思います。法科大学院に進んだ際、大学院生同士や教員との専門的な議論も、ゼミでの経験によって、さほど身構えることなく議論することができました。また、学部生の頃に沢登文治教授のゼミで「人権」に関する勉強をしたため、冤罪や社会貢献への関心が高まり、法曹への憧れもより一層強くなりました。
南山大学の法科大学院では、勉強できる環境が整えられています。院生各自に研究室とキャレル(個人用机)が与えられ、法科大学院棟内にある図書室には、最新の文献や資料、データベースが充実しており、静かに集中して高密度な勉強ができる環境でした。また、成績優秀者には最高50万円の奨学金が給付される制度があり、それを目標に、勉強に対するモチベーションを常に高く保つことができました。


難関の新司法試験を突破するには、大学院の授業だけでは足りません。これは南山法科大学院のみならず、全ての法科大学院で言えることだと思います。新司法試験の短答式試験・論文式試験共に、必要な知識、解法を自分で補う必要がありました。
短答式試験では、過去問で問われた条文知識や判例の傾向を分析し、出題頻度の高い単元は、肢別問題集や過去問集、判例百選をくまなく覚えました。特に問題集は、一問ずつ解くのではなく、選択肢の誤り部分を自分で修正してみて、解説と共に正しい知識を覚えこむ、という勉強方法を繰り返すことで時間効率を上げました。
論文式試験もまずは過去問で出題傾向を分析して、採点者が望む答案の共通したモデルを模索しました。そして、そのモデルに合わせて自由自在に答案が書けるように、重要単元は、暗記のレベルを超えて理解のレベルまで持っていくことを心掛けました。この「暗記を超えて理解のレベルまで持っていく」というのは、成績のよい同級生が、授業で返却されたレポートを見ながら「今回は理解が足りなかったな」という発言をしていたことからヒントを得ました。
勉強するにあたり使用した教材は、過去の新司法試験上位合格者のブログ等をチェックして、定評のある基本書や問題集をできる限り選ぶようにしました。「この教材を使い込めば合格できる」と信じることができる教材を効率的に見つけることで、教材選びに悩む時間を無くすことが重要だと考えていたからです。また、試験に合格した人の勉強方法を参考に、自分自身に合うよう工夫して取り組むようにしました。
教員による新司法試験の論文指導は、全ての法科大学院において国から禁止されています。しかし、南山法科大学院では「アドバイザー」という制度があり、実務家の先生(主に南山法科大学院を修了した弁護士)に、授業とは別で勉強の相談に乗っていただけたり、論文の簡単な添削や解説をしていただけたりします。私は月に3回ほど、アドバイザーの先生のところに行ってアドバイスを受け、勉強を進める上での指針としました。実際、私の新司法試験合格において、アドバイザー制度の利用は非常に大きな要因であったと思います。
得意な科目は刑法です。答案を書くにあたって、理論的な枠が他の科目に比べると固まっていることや、暗記する項目が比較的少なく、具体的な事例に即して問題を考えさせる科目だからです。大学院1年次に刑法担当の末道康之教授にみっちり鍛えられたため、他の科目よりも理解が圧倒的に早く、また大学院の試験で成績がよかったことも自信になりました。
逆に苦手な科目は民法でした。暗記する項目や理解する項目が他の科目に比べて非常に多く、答案を書くために必要な知識の習得に時間がかかったことが理由です。苦手な民法を克服するために、得意な科目と比較して勉強するようにしました。例えば、得意な刑法は判例の読み込みが進んでいるのに対し、苦手な民法であまり判例を読み込んでいないことに気付き、同じレベルまで判例を読み込むようにしました。
※憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法

はっきり言って、学部生の時はあまり熱心に勉強していませんでした(笑)どちらかというと、大学生活を思いっきり楽しむ、という感じでしたね。
しかし、法科大学院に進学してからは、「本気のチャレンジ」と位置づけ、勉強に取り組みました。予定の無い日は朝9時から夜10時まで大学院の研究室で勉強していました。入学当初は、長時間勉強するという習慣がなく、苦しかったことを覚えています。ですが、就職していった大学の同級生が働いていることを考えて、「自分は勉強することが仕事で、夜の勉強は残業と同じ。」という感覚で、研究室に残るようにしていました。
新司法試験直前期には勉強の場を自宅に変え、集中して勉強しました。実際に机に向かっている勉強時間のみをカウントするためにストップウォッチを使用し、一日の実勉強時間は約10時間でした。大学院の1年次から研究室で長い時間勉強するという習慣を身につけたことによって、試験直前期の長時間の実勉強時間に耐えることができたと思います。
私は学部生時代に軽音楽部に所属しており、その頃からずっと趣味でバンド活動を続けていました。バンドでドラムを担当し、週に1回ほどスタジオでセッションすることで気分転換をしていました。大学院の長期休みのときには、ライブハウスでライブも行っていましたね。これが普段の勉強漬け状態からの解放になってよかったと思います。
他にも、大学院の友人と雑談し、日々小さな息抜きをしていました。その際、短時間でしっかりリラックスできるよう、美味しい紅茶やコーヒーを色々集めて試したりしていました。

新司法試験合格というのは、私にとって途方もなく遠く、大きな目標でした。この大きな目標の実現のために、その途中途中に細かい目標設定(例えば、大学院の試験で上位の成績をとる など)をし、それに向けての実行、軌道修正の繰り返しが必須と考え、これを繰り返してきました。このことから、適切な目標設定能力と自分自身を客観視する能力を身に付けることができたと思います。
また、法科大学院には様々なバックグラウンドを持つ院生が集まっていたため、彼らと議論や雑談をする際に、様々な見識に触れることができました。この経験は、私に一方的な偏見にとらわれずに、深く考えることの大切さを教えてくれました。
受験勉強に熱中していた私の周りの時間が、新司法試験合格後、一気に動き出した感覚があります。あと1年間の修習を無事に終えられれば、法曹として社会に出て働くことができると思うと、身の引き締まる思いもありますが、それよりも非常にワクワクしています。この修習の1年間を充実したものにして、そのままの勢いで社会に飛び出していきたいです。

私は冤罪を無くすことを、刑事弁護人の立場からアプローチしたいと考えています。そのため、刑事事件を数多く扱い、被疑者・被告人の話に親身に耳を傾けることができ、同時に国家権力に怯まない在野の精神を大切にする、タフな弁護士になりたいと思っています。

私もそうですが、南山大学から法科大学院に進み、新司法試験に合格した先輩方は、実は数多くいらっしゃいます。南山大学の学生は自らの学力に慢心が無く、謙虚である方が多いため、総じて法科大学院に進むと普段の勉強を真面目かつ熱心に取り組む傾向にあるからだと思います。
新司法試験合格のためには、鮮やかな理論的閃きのような天才肌的才能は要求されません。むしろ基本的な法制度・規範・趣旨から演繹して、具体的な問題を素早く解決する能力が主に要求されます。そしてその能力は「よし、法曹になってやる!」という覚悟があれば、南山大学の学生なら時間をかけてきちんと習得することが可能です。皆さんの努力が実を結びますよう、心から願っております。
(2011年11月 現在)
2011年11月現在

| いちかわ てつひろ | ||||
| 市川 哲宏 | ||||
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法学部 法律学科 2008年 3月卒業
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法務研究科 法務専攻 2011年 3月卒業
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| 2003年3月 | 愛知県立旭丘高校 卒業 |
| 2008年3月 | 南山大学法学部法律学科 卒業 |
| 2008年4月 | 南山大学法務研究科(法科大学院)入学し、新司法試験に向け勉強を開始 |
| 2010年2月 | 「エクスターンシップ」を受講し、弁護士事務所にて研修を受ける |
| 2011年3月 | 南山大学法務研究科(法科大学院) 修了 |
| 2011年5月 | 平成23年度新司法試験を受験 |
| 2011年9月 | 新司法試験合格 |