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マドリードの外交官学校の卒業式にて(右から4番目)
本省での1年間の実務研修を経た後、大学で身に付けた語学力をさらに伸ばし、専門とする地域の政治・経済などの知識を増やすために、スペイン・セビーリャ大学歴史学部中南米史修士課程、スペイン外交官学校国際関係学修士課程でそれぞれ1年間、語学研修を行いました。研修中は、日常生活のさまざまなコミュニケーションから住まいの賃貸契約、自動車の購入も自分で行わなければなりません。この2年間で語学力も、精神力も鍛えられたと思います。そして、世界中から集まってきた外交官の卵たちと交流する日々。外交官としてのあり方や多様な価値観に触れることができました
パラグアイ大統領との会談にて通訳を担当
最初の勤務先は在パラグアイ日本国大使館でした。パラグアイはそれほど大きな国ではありませんから、職員の数も限られています。その分、幅広い仕事を経験することができました。例えば、日本とパラグアイの要人同士の会談に通訳として同行することも多々ありましたが、この頃はうまくできなくて落ち込んでばかりいましたね。専門用語や法律用語はもちろん、その国の社会情勢や歴史背景、生活習慣などを理解していないと最適な通訳はできません。そして、国と国との交渉では常に、完全な通訳が求められるのです。
イラク復興支援調査団(右から4番目)
外務省では約2〜3年ごとに異動することが多いです。在パラグアイ日本国大使館の次は本省に戻り、経済協力局(現在の国際協力局)政策課勤務となりました。時は2001年。全世界が震撼したアメリカ同時多発テロ事件が発生しました。イラク戦争の終結後すぐにヨルダンへ飛び、陸路からバグダッドへ。現地の人々が何を求めているのかを自分の目で確認し、復興支援策を立案しました。正直、生命の危機を感じることもありました。しかし、この仕事ができるのは私たち外交官だけ。そんな思いを胸に、ウンム・カスル港の浚渫やバグダッド市上下水道の整備など、さまざまな復興支援プロジェクトを立ち上げました。
2年後の2003年には中南米局南米カリブ課(現在の南米課)へ。中南米諸国との外交関係に携わりました。この頃の中南米は、ブラジル、ウルグアイ、ボリビアなど、左派政権の誕生が続き、急変する政治情勢の真っただ中にありました。一方で日本は天然資源の安定的な確保という、大きな課題を抱えていました。デリケートな交渉の連続でしたね。
国際観光フェスティバル日本ブースでのTV取材
国と国が国益をかけて交渉するわけですから、当然、緊張感はあります。でも、それだけで終わらないのが外交官という仕事の、もうひとつの魅力ではないでしょうか。2006年から勤めた在スペイン日本国大使館での2年間は、まさに楽しさに満ちあふれた時間でした。スペインでの主な業務は政治や文化広報。政府の広報官として、日本政府から発信される情報や、日本の正確な姿をスペインの一般市民に伝える役割を担っていました。現地メディアに出演したり、講演を行ったり。ラジオでは週に一度のレギュラー番組も任されていたんですよ。最初は緊張しましたが、慣れるにしたがって楽しく出演することができました。
2008年から経済局国際貿易課サービス貿易室という部署で、EPA やAPEC、WTOなどの枠組みを軸に、海外に進出する日本企業がスムーズに活動できるよう、関係省庁と調整しながら諸外国とのサービス貿易分野の自由化交渉を担当しています。外交関係や国内の政策決定に直結すると同時に、日本企業の活動支援を通じて日本経済の活性化にもつながる仕事ですから、狙い通りの成果が得られた時は大きな達成感を得ることができます。 また、交渉に当たっては、金融、運輸、電気通信などサービス関係企業の方、経済関係・法律関係の有識者の方等と緊密に協力して方針を練り上げます。高度な知識、確かな見識をお持ちの方と一緒に仕事をすることは、とても刺激的な体験です。
※EPA:Economic Partnership Agreement/経済連携協定 2以上の国または地域間で、自由貿易協定の要素(物品及びサービス貿易の自由化)に加え、貿易以外の分野、例えば人の移動や投資、政府調達、二国間協力等を含めて締結される包括的な協定のこと。
※APEC:Asia-Pacific Economic Cooperation/アジア太平洋経済協力 アジア太平洋地域の持続可能な発展を目的とし、域内の全主要国・地域が参加するフォーラム。域内の貿易投資の自由化・円滑化、経済・技術協力を主要な活動としている。
※WTO:World Trade Organization/世界貿易機関 すべての加盟国が参加する貿易交渉を通じて、貿易自由化をはかることで、世界の経済発展・拡大をめざしている。
確かに夜遅くまで残業することは珍しくありません。男女を問わず、体調管理は必須です。ただ、近年入省している外務専門職員のうち、約半数は女性です。当然、産休制度や育休制度、勤務時間短縮制度がありますし、それを利用しやすい雰囲気もあります。海外でも女性外交官は当たり前のように活躍していますから、外務省は自然に女性が働きやすい土壌を形成しているのだと思います。女性であるという理由でハンディや不公平を感じたことはありません。
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高校生の時、海外で事業を立ち上げようと奮闘する日本人のドキュメンタリー番組を見たことがきっかけでした。そこで、自分も海外で起業しよう!ではなく、がんばっている人たちをサポートできる人間になりたいと思ったのです。とはいえ、その実現方法はわかりません。遥か彼方で瞬く星のごとく、想いは漠然としたものでした。ただ、いつか海外で活躍するための語学力や国際感覚を養いたい。私が南山大学を選んだのは必然でした。

南山大学で学び、先生方や高い意識を持つ友人、留学生の方々との触れ合いを通して、ぼんやりとしていた夢のカタチの輪郭がはっきりとしてきました。海外で活躍したい。そして、それは “公益”を備えたものでありたい。その観点から民間の企業ではなく、外務省をめざすことにしたのです。目標が決まれば、おのずとやるべきことも決まり、高い目的意識を持って学生生活を送ることができます。
私が在学中、過去に外務省の専門調査員をされていた先生がいらっしゃったんです。外務省のこと、外交官という仕事について、さまざまなお話をしてくださいました。さらに、外務省をめざす学生を対象にした「外交問題研究会」という研究会を立ち上げてくださり、外務専門職員試験対策や実際に外務省で活躍している方をお招きして、お話を聞く機会を設けてくださいました。同じ目標を持つ友人と一緒に勉強できたことは、自分自身のスキルアップにとても役に立ったと思います。

在学中はスペインのサマースクールに2回、参加しました。多様な価値観に触れ、物事を限定的な角度からしか捉えてなかった自分の視野が大きく拡がったと思います。海外で働くことの楽しさ、難しさ、奥深さの一端を感じましたね。また、友人とさまざまな地域へ節約旅行に出掛けたことも良い経験でした。最も印象に残っている国はキプロス。地中海に浮かぶ島国です。キプロスはギリシャ系住民とトルコ系住民が分離独立を主張し、事実上、国が真ん中で分断されている状況にあります。ヨーロッパとイスラム、2つの文化のせめぎ合う緊張感。実際に目で見て、肌で感じたからこそ得られるものだと思います。
卒業後になりますが、スペイン政府認定スペイン語検定試験(D.E.L.E.)上級、文部科学省認定スペイン語検定試験1級、TOEIC925点などです。
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語学力を高めるための日常的な学習方法としては、ラジオの英会話番組を聞いたり、新聞やテレビなどのニュースに外国語で触れるようにしていました。生活習慣の中に、外国語と触れ合う時間を設けることで無理なく、自然に勉強できたと思います。 あとはESSに所属していたことも大きかったですね。学内にいながら多くの留学生と交流できますから、まず語学力が鍛えられました。また、私はガイドセクションに所属して日本文化を外国の方に紹介するという活動をしていたので、日本の伝統や文化など、あらためて自分の国のことを知ることができました。
※ESS:English Speaking Society/英語での会話やディベートを通して、語学力を高め、国際感覚を養うことを目的としたサークル。
特に在スペイン日本国大使館に勤めていた時は、広報を担当していましたから、ESSで身に付けた知識がそのまま役立ちました。他にも南山大学で得た南米やヨーロッパの歴史、政治経済の知識は今の私の力になっています。外務省に入省してから分かったことですが、南山大学は見識豊かな教員陣や研究資料の豊富さなど、スペインやラテンアメリカについての研究環境がとても整っています。この恵まれた環境を生かして、多くの後輩が海外に飛躍してくれると嬉しいですね。

いろいろな分野に興味を持ち、勉強していただけたらと思います。ご自身の専門にとらわれすぎず、好奇心のおもむくままに学び、知識を吸収してください。そして、たくさん本を読んで、人間としての幅を広げてほしいですね。私自身、学生時代は英語やスペイン語の勉強はもちろん、政治や法律の講義を積極的に受講していました。他学科の授業をこっそり聴講したことも数えきれません(笑)。
あとは友人をたくさん作ってください。忙しい毎日ですが、今でも学生時代の友人とは仲良くしています。JICAなど、近いお仕事をしている人がたくさんいて、とても心強かったりします。
※JICA:Japan International Cooperation Agency/独立行政法人国際協力機構 技術協力や資金協力を通じて、開発途上国の人々のニーズに応じた国際協力を行う機関。
目下の課題として英語力の向上があります。外国と交わす条文は英語で作るのですが、単語ひとつの違いで、解釈が異なってしまいます。語学に関する向上心は尽きません。自宅のパソコンでスカイプを利用してフィリピンの先生から個人レッスンを受けています。帰宅が遅いので、毎日、レッスンを受けられないのが悩みですね。
幅広い経験を積み、困難な状況でも国益を確保するために的確かつ瞬時に判断を行える知見を養いたいです。そして、「中南米のことなら津田に聞け」と言われるような、エキスパートになりたいと思っています。

自分でできないと諦めてしまったら、本当にできなくなってしまいます。目の前に困難が広がっていようと、勇敢にチャレンジしてほしいと思います。私はそれをラテンアメリカの人々から学びました。彼らはけして失敗を怖れません。チャレンジしている人は、みんな輝いて見えます。
(2010年6月9日インタビュー)
2010年6月現在
| つだ ふみよ | ||||
| 津田 文代 | ||||
| 外務省 経済局国際貿易課サービス貿易室 | ||||
| 1995年3月 | 外国語学部 イスパニヤ科 (現:スペイン・ラテンアメリカ学科) |
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| 本省での1年の実務研修、スペイン・セビーリャ大学およびスペイン外務省附属の外交官学校での2年の語学研修を経て、1998年より在パラグアイ日本国大使館に三等書記官として勤務。 |
| 2001年より経済協力局(現国際協力局)政策課においてアフガニスタンやイラクの復興支援に携わる。 |
| 2003年より中南米局南米カリブ課(現南米課)において中南米諸国との外交に従事。 |
| 2006年より在スペイン日本国大使館に二等書記官として勤務。 |
| 2008年より経済局国際貿易課サービス貿易室においてサービス貿易分野の自由化交渉を担当。 |