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公共政策部ジェンダー平等推進課ジュニア専門員として、ネパール、ナイジェリア、ホンジュラス、メキシコのマヤ族など、開発途上国の女性の生活を向上を図るためのプロジェクトの実施を支援しています。現地で活躍する専門家や開発コンサルタントと一緒に、プロジェクトの企画・立案から実施を行っています。また、プロジェクトの中間時点や終了時点では、その事業の成果がきちんと出ているか現地に出向いて評価調査を行い、そこから導き出された教訓が他の案件にも応用できるような努力をしています。
※JICA:Japan International Cooperation Agency/技術協力や資金協力を通じて、開発途上国の人々のニーズに応じた国際協力を行う機関。正式名称は「独立行政法人国際協力機構」
※ジェンダー:生物学的な性別に対して、「男らしさ、女らしさ」など社会的・文化的につくられた性差のこと
途上国の女性は男性よりも教育レベルが低いなど、文化的・社会的な理由で貧困に陥る場合が男性よりも多いんです。また、女性性器切除や名誉殺人など、女性に対する偏見や差別により、女性が身体的な被害を受けるケースも数多くあります。バングラデシュでは、毎年100人以上の女性が硫酸をかけられ、死傷したり顔や体に一生消えない傷を負っています。

例えば、中南米諸国の中でも最貧国の一つ、ホンジュラスでは、地方に住む女性たちが、染色や織物などの技術を身に付け、自らの手で小規模事業を起業するための支援をJICAはしています。
また、アジアの最貧国、ネパールでは1日1ドル以下の所得層が全人口の4分の1を占め、小学校すら行けない子どもがたくさんいます。特に女性と子どもは貧困の影響を受けやすく、栄養状態ひとつを見ても、女性の7割と乳幼児の9割が貧血という状況にあり、それが感染症の繰り返しという悪循環、さらには妊産婦や乳幼児の高い死亡率に繋がっています。ネパール政府はこうした問題に正面から取り組み、女性と男性が平等に恩恵を受けられる、平和で豊かな社会の実現を目指しています。JICAではこうした政府の取り組みを支持するとともに、ネパールの人々が自分たちの抱える問題を自らの力で解決していくための支援を行っています。

バングラデシュに赴任中、私が雇っていた女性のお手伝いさんを、資金援助も含めて、英語学校に通えるようにサポートしたことが心に残っています。バングラデシュでは、女性の多くが外出もままならず、読み書きも教えられないまま早婚を強いられます。彼女も16歳で結婚して一方的に離縁されたのですが、仕事の合間をぬって英語学校に通ううちに、料理や美容などの技術を身につけるために自発的に専門学校にまで通うようになりました。さらに、イスラム教からキリスト教へ改宗するなど、人生における重要な選択を自分でできるようにもなりました。全ての女性が同じように力をつけ、自らの意志で自分の人生をコントロールできるようになるとは限りませんが、チャンスがあればもっと多くの女性にそのような機会を提供したいと思います。
やはり現地に行って、女性の生活が向上するようなプロジェクトに参加して、本当に困っている女性の生活が改善して、その人の笑顔が見られること。女性であるということで国境を越えて理解し合え、共通の目標に向かって取り組むことのできる一体感も生まれます。
そういう苦労はほとんど感じたことがないんです。これは、南山大学の自由な気風と、多様性・国際性に富んだ環境の中で学んだことが大きいと思います。
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大学時代に国連難民保護官(当時)石川幸子さんの『東南アジアの風に吹かれて』という本を読んだことがきっかけです。国際公務員としてインドシナ難民支援のために働く日本女性の存在を知り、私も将来は貧しい国の人たちの生活の向上に役立つ仕事がしたいという思いを抱くようになりました。幸運にも、南山大学を卒業後、名古屋にある国際連合地域開発センターに応募したところ、総務部の旅行担当として採用されました。その1年後に人事・総務部長秘書を任され、結局6年間勤務しました。
※国連難民保護官:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に所属し、紛争や迫害によって故郷を追われた難民の保護のための活動を行う国連職員

国連の中でも、さらにプロフェッショナル・レベルの仕事をしたいと思うようになったからです。そのためには修士号が必要と考え、ジョージ・ワシントン大学国際関係大学院に留学しました。留学当初は、卒業したら国連競争試験を受けて国連本部の経理か人事で働きたいと考えていましたが、在学中に世界銀行ジェンダーと開発グループでインターンを1年経験したことで、「ジェンダーと開発」という学問分野に興味を持つようになり、幸運なことに世界銀行から奨学金もいただけたので英国サセックス大学の修士課程に、翌年にはロンドン大学の博士課程に進学しました。
※国連競争試験:国連事務局が、正規職員を選抜するために行う試験のこと
※世界銀行:各国の中央銀行に対して融資を行う、国際連合の専門機関
学問的には、良い論文が書けたら自己満足は得られるのですが、これで貧しい国の女性の生活が変わるわけではないと感じ、途上国の現場を自分の目で確かめたいと思いました。それで、JPOに応募し、バングラデシュに赴任することとなりました。
※JPO:各国政府が費用を負担して国連職員をめざす若者に国際機関での職務経験を提供する制度
国連常駐調整官事務所に所属し、そこで「女性に対する暴力防止共同イニシアティブ」の事業を立ち上げ、関係機関と調整しながら、そのためのプログラムを企画・立案する作業をしていました。

プライベートではパートナーと出会い、結婚したこと(笑)。やはり国際協力の仕事をしているオーストリア人で、実は彼はまだ現地にいるんですよ。仕事の面では、人身売買され、性産業で働かされている少女や嫁ぎ先でひどい暴力にあっている女性、路上で物乞いをして生計を立てるストリートチルドレンなど、過酷な状況を目の当たりにして、そういう弱い人の立場に立った仕事をしていきたい、という思いを新たにしました。本部だけで仕事をしていたら、机上の論理でものを言っていたかもしれません。
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ゼミとクラブ活動です。1年次からESSに入り、ドラマセクションで音響や監督を担当。楽しくて、熱中しました。
※ESS:English Speaking Society/英語での会話やディベートなど、話すことを目的としたサークル
語学とコミュニケーション能力。ESSではステージに立たなければならいこともあり、それで度胸もついたかもしれません。

やはりゼミを始め南山大学の授業で学んだことは大きいと思います。英米学科って英語で卒業論文を書くんですよ。そこで英語で文章を書くのが苦にならないというレベルまで語学力を身につけることができたと思います。だから、卒業して国連機関に就職したときも、事務レベルの英語にはほとんど不自由しませんでした。
やっぱり語学ですね。幸い南山大学には語学を磨くための環境が充実していますし、交換留学の制度もあります。こうしたメリットを活用して、英語でスピーチや討論ができるまでの語学を磨いてほしいと思います。夏休みのような長い休みを利用して海外に出かけ、視野を広げるのもいいでしょう。

一口に国際協力といっても、国連、JICA、NGOなど色々な組織があるので、まずは、自分がどの分野で活躍したいか、目標を立てることが大切です。たとえば国連で働きたいなら、まずは語学を磨くこと。それも英語だけでなく、フランス語、スペイン語など、他の外国語も習得しておくと有利です。2つ目は専門性。私の場合はジェンダーですが、たとえば環境問題や紛争解決の問題など、自分の興味のある問題を大学院レベルまで勉強して専門性を身につけることが必要です。インターンシップやボランティアの機会を活用して、職務経験を積み上げていくことも大事だと思います。
※JICA:Japan International Cooperation Agency/技術協力や資金協力を通じて、開発途上国の人々のニーズに応じた国際協力を行う機関。正式名称は「独立行政法人国際協力機構」
※ODA:Official Development Assistance/日本から発展途上国の政府を通じて資金や技術の協力を行う政府開発援助のこと
※NGO:Non-Governmental Organization/国際協力に携わる「非政府組織」「民間団体」。開発や人権、環境、平和など、地球規模の問題に国境を越えて取り組んでいる

短期的に言えば、2010年に海外に派遣されることになっていますので、できれば女性支援のプロジェクトの一員として、人身売買や女性に対する暴力など、途上国の女性が抱える深刻な問題の解決に貢献したいと思います。長期的には、途中になっている博士課程を修了させて、いつかジェンダーという学問分野を日本でも教えることができればいいなと思っています。アカデミズムと現場は境目なく繋がっていると思いますので、大学と現場を行き来しながらジェンダー平等の推進に関わっていければうれしいですね。

世界は広いので、たくさんの国を訪ねてたくさんの人に会ってください。今は何がしたいか分からなくても、いろいろなことを見たり聞いたりしているうちに、自分が一体何をしたいのか分かるようになると思います。それから、夢をかなえる方法は一つではありません。いろいろ試して一番自分にあっている方法を見つけてください。時には回り道を楽しむ余裕も必要だと思います。
(2009年12月2日インタビュー)