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第11回
「 演習II」

藤本 哲史



社会学的実践の楽しさと難しさ

授業風景

藤本 哲史ふじもと・てつし 
外国語学部助教授、英米学科。専攻分野は社会学(労働社会学、社会心理学)。 長期テーマは「組織のジェンダー化」。短期テーマは「企業によるファミリー・フレンドリー施策展開の効果」。担当科目は『アメリカの社会』『比較社会論』など。


 私のゼミは社会学のゼミです。社会学はなんでもありの学問で、取り扱うテーマも、離婚、少子化、自殺など現代社会が抱える深刻な問題から、マンガ、ケータイ、音楽、恋愛、ファッション、お笑い、そして占いなど、日常生活に普通に存在しているものまでさまざまです。なぜ社会学にはなんでもありかというと、それはこの学問が「社会」を「人と人との関わりあい」の総体ととらえるからで、人間相互の関わりが根底にある社会現象ならば、なんでも分析の対象になります。ですから、ゼミ生の興味も多種多様で、先にあげたテーマ例は、すべてこれまでのゼミ生の卒論に関係しているものばかりです。
 確かに、社会学という学問自体は何でもありなのですが、私自身にも専門領域があり、全ての領域を完璧に教えることはできないので、ゼミでは2つの活動を中心に行っています。ひとつは、基本概念の学習です。まずは、社会学を学ぶ以上知っていなくてはいけない基本概念(例えば、役割、階層、交換など)を、教科書を使って浅く広く学びます。その際、なるべく実際的な例をいくつも取りあげて、概念だけがひとり歩きしてリアリティのないものにならないように注意します。
 ふたつめは、基本概念を、実際の社会現象にあてはめて使う練習です。例えば、なぜやせたいと思う女性が多いのか、この問題を「欲求」という社会学の概念を応用して説明するとします。つまり、女性はどのような「欲求」を充足するためにやせようとするのか?なぜ男性には女性のような「やせ願望」があまり見られないのか?そのような問いに対して答えを探そうというわけです。私のゼミでは、この練習をグループ・プロジェクトという形で実践しています。まず、心理測定や質問紙調査の方法について学び、次にゼミ生をいくつかの小さなグループに分けて、自分たちでテーマを決めて調査を行います。グループごとに学内外で約300人ほどの人々に調査票を配付し、データをコンピュータに入力し、そして統計解析を行います。調査や解析は決して簡単ではありません。しかし、学生自ら関心を持った問題を客観的に検証してみる経験は、とても価値あることだと考えています。
 なんでもありの社会学を学ぶ私のゼミは、なんでもやってみようのゼミでもあります。今年の夏、私の4・3年ゼミ合同で、よみうりテレビ主催の「鳥人間コンテスト選手権大会」に出場しました。これは、自作によるグライダーを琵琶湖の会場に持ち寄り飛行距離を競うもので、今年で28年目をむかえる長寿イベントです。始めは、図面審査で失格になることを覚悟で始めた取り組みでしたが、予想に反して審査に合格してしまいました。私たちが応募した競技クラスではわずかに十チームのみが合格だったという点ではとても名誉なことです。しかし、文系集団の私たちにとって機体製作の時間が4月からの数ケ月しかないというのは「諦めろ」と言われているのに等しく、本当に苦しい、血のにじむような日々でした。(ちなみに、私たちのグライダーの翼長は12メートル弱もあります。)あいにく大会当日は台風11号の影響でさまざまな問題が発生しましたが、最終的に無事に飛ぶことができ何よりでした。
 機体のコンセプト作りや製図を含めると約8ヶ月にもなる「鳥コン」プロジェクトでしたが、まさにこれは社会学的実験だったと思います。「分業」「集団凝集性」「リーダーシップ」「対人コミュニケーション」など、机に向かって勉強する時は理解できても、いざ実際の場面となるといかにうまくいかないことか。社会学的実践の楽しさと難しさを学ぶことができたのも、この意欲的なゼミのおかげだと思います。みんな、ありがとう。