.



 ハワード・ベーカー駐日米国大使による日米関係150年を記念する講演が、2004年3月1日、名古屋観光ホテルにおいて行われた。1853年にマシュー・C・ペリーが日本に来て開国を求め、翌年1854年の再来日により3月31日に「日米和親条約」が結ばれ、日米関係が開かれた。200年を越える鎖国を終えた日本は国際社会との関係をこのアメリカとの関係で始めた。それから150年経った。この150年は正にアメリカとの関係で推移し、友好、敵対、戦争、敗戦、占領、そして友好・同盟の150年であった。
 南山大学では、1964年に英米科を擁する外国語学部が設立され、アメリカ研究がカリキュラムに取り入れられ、地域研究が大学における研究・教育に加わった。その後アメリカ研究センターがフルブライト委員会の支援で設立され、大学及び中部・東海地域のアメリカ研究の拠点としての役割を果たしてきた。そして外国語学部の設立から40年目の今年、アメリカ研究、スペイン・ラテンアメリカ研究、アジア・日本研究より成る国際地域文化研究科(修士課程)が新たに設立された。ベーカー大使の講演は、この研究科の新設を記念するものでもあった。
 ベーカー大使の講演は『150年の日米関係を超えて―未来への展望』と題し、150年の歴史を踏まえ、今日の日米関係をマイク・マンスフィールド元大使の言葉を引き合いに出して、「これまでにないぐらいの世界で最も重要な2国関係」と評価した。特に太平洋戦争後の日米「同盟」関係を太平洋地域に平和と安定をもたらしたこと、民主主義、経済成長、そして繁栄をもたらしたことを指摘して、高く評価した。
 日米両国の国際社会における「ソフト」と「ハード」の力に言及し、「この力を将来国際社会のためにいかに責任を持って行使していくかが重要である」と説いた。当然のごとく、イラク戦争における日本の自衛隊派遣を「国際社会が直面している問題に、日本が積極的に取り組もうとしている何よりの証拠」との見方を示し、「日本が対テロ行為に加わったのはアメリカとの友情、同盟関係のみに基づいたのではなく、日本の国益のためであるはず」と強調した。「力を持った日本はそれにふさわしい責任を果たすべきだ」と説き、「アメリカは日本が国連安全保障理事会の常任理事国になることを支援する」とも語った。
 21世紀の挑戦に立ち向かっていくためにはお互いが共有できる「明確なヴィジョン」が必要だとし、特に講演に出席した100人余の学生に向かって、「日本のために、日本の将来のために、そして世界のためにヴィジョンを新たに作り出すように」と熱く語った。ベーカー氏が講演の中で何度となく若者に言及したことは多くの学生を奮い立たせたことと思う。
 この講演は米国大使館、名古屋アメリカン・センターの協力で実現できた。関係者の努力に感謝したい。
 (宮川佳三 前アメリカ研究センター長 外国語学部教授)