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第8回
「演習I 」

牛田千鶴



ラテンアメリカ社会論ゼミナール

授業風景

紛争と貧困の中を生き抜くコロンビアの子どもたちについて学ぶ

牛田 千鶴うしだ・ちづる  外国語学部助教授 スペイン・ラテンアメリカ学科。
専攻分野はラテンアメリカ地域研究(教育開発論)。長期研究テーマ「ニカラグアの教育開発における国際協力の課題」。短期研究テーマ「在米ラテンアメリカ系移民児童生徒の学力向上と社会参入をめぐるバイリンガル・バイカルチュラル教育の有効性」。担当科目『ラテンアメリカ社会研究』、『ラテンアメリカの文化』など。


「ラテンアメリカ」に対する一般的なイメージとは、一体どのようなものでしょうか。昨年、春学期最初のゼミで学生たち(3年生)に尋ねてみましたところ、以下のような答えが返ってきました。―「治安が悪い」、「貧しい」、「多様な人種・民族が存在する」、「人種・階層差が激しく貧富の格差も大きい」、「ヨーロッパ列強の植民地としての歴史を持つ」、「日系人が多い」、「混血人口が大半を占める」、「先住民が独自の文化を保持している」、「多文化社会である」、「サッカー熱が高い」、「人々が陽気で情熱的である」、「信仰心が篤い」、「家族を大切にする」、「ストリート・チルドレンなど下層階級の社会問題が目立つ」、「石油や鉱物資源に恵まれている」、「コーヒー・とうもろこし・いも・とうがらしなどを生産する」、「開発途上にある」、「ナショナリズムの表出が著しい」、「ブラジルではポルトガル語が話されているが地域全体ではスペイン語を公用語とする国が多い」、「方言が豊かである」、「音楽・舞踊の宝庫である」―。ラテンアメリカ社会の多様性を象徴するかのごとく、学生たちの回答も実に様々で幅広いものでした。
 地理的概念に基づき「中南米諸国」という場合には通常、英語圏のジャマイカやベリーズなどをも含む33カ国を対象としますが、かつてラテン系ヨーロッパ諸国の植民地であった歴史的事実に依拠する名称「ラテンアメリカ」は、メキシコやアルゼンチンなどスペイン語圏18カ国にポルトガル語圏のブラジル、フランス語圏のハイチを加えた計20カ国(米国自由連合州プエルトリコを入れれば21の国と地域)を指すこととなります。
 ゼミでは、これらラテンアメリカ諸国(あるいは地域)で生じている社会問題について、貧困・教育・福祉・民族・移民・国際協力等に関連したテーマを設定し、研究発表・討論・考察を重ねていきます。
 春学期にはまず手始めに、「各国リポート」と題する報告をしてもらいます。これは、ラテンアメリカ諸国の中からそれぞれもっとも関心のある国を選び、(1)国の概要(人口・人種構成・言語・宗教・政治・経済状況等)(2)略史年表 (3)社会問題に関する調査報告(テーマは自由)から成る資料を作成し発表する、というものです。夏期休暇には、図書館の講習会で教わった検索方法(データベース検索)を活用し、関心のある分野で欧文による論文2本を読んで内容をレポートにまとめ提出する、という課題を出しています。
 秋学期には、社会開発・国際協力関連の論文を輪読して意見交換を行うとともに、翌年の卒業論文執筆に向けた準備段階としての研究発表を順次進めていきます。昨年度は、コスタリカの平和教育と日本の国際理解教育、ブラジルにおける日本語教育、ラテンアメリカにおける女性運動、日本からの対ブラジル・ペルー移民の歴史、アメリカ合衆国へのメキシコ人移民流出の背景、紛争下にあるコロンビアの子どもたち等をテーマに、大変興味深い発表が行われました。ゼミの主役はなんといっても学生たちです。私がしていることといえば、ひとりひとりの関心に応じた資料の紹介、レジュメ作成に際しての助言、発表時のサポートなど、あくまでも「お手伝い」にすぎません。ラテンアメリカ社会について自ら調べ学ぶことが、学生たち自身の人生や世界のあり方を考えるひとつの契機となってくれるよう願いつつ、今後とも可愛いゼミ生たちを応援し続けていくつもりです。