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国際経済における
経済政策の効果について
唐澤 幸雄




唐澤 幸雄 からさわ・ゆきお 

経済学部講師、経済学科。
専攻分野は国際経済学、マクロ経済学。長期研究テーマは「国際経済における経済政策の効果」。短期テーマは「小国開放経済における安定化政策と成長」。担当科目は『国際経済政策論』、『マクロ経済学』など。


 私は、学部生時代からこれまで、国際経済学という経済学における一分野を専攻してきた。この日本という国土の小さな国において、国際的な要因が我々に与える影響が非常に大きいことを常々感じてきたからである。事実、日本が経済を国際的に開放した後、私達にもたらしてくれたものは計り知れないといえるであろう。現在の日本が一人当りGDPでは世界のトップクラスにあることは、国際的な要因抜きには考えられない。ここで、一言で国際経済学といっても、国際貿易論、国際金融論、開発経済学、さらに理論的なアプローチから実証的なアプローチまで、その研究分野・手法は様々である。私は、現在、それらの分野の中でも特に、開放経済における政府の財政・金融政策の効果などを分析する国際マクロ経済学を理論的に研究している。例えば、「為替レートや国際収支がどのように決定されるか」、「最適な為替相場制度の選択に関する問題」、「効率的な国際資本市場の運営」、「発展途上国における通貨危機」などといった分析対象は、全て国際マクロ経済学における重要な研究課題である。特に、各市場がより開放的になりつつある昨今、上記の問題は政策を実施する国のみに限らず、貿易相手国にも大きな影響を与える。実際、貸借関係が存在している国家間において、一方の国で生じた何らかのマクロ的ショックは、時に他国に大きな打撃をもたらすことになる。このような状況下において、各国が行うべき最適なマクロ経済政策、具体的には開放経済においてどのような種類の租税(および補助金)をどのような基準に基づいて課すべきなのか、あるいは様々な国際通貨制度の下での金融・通貨政策が経済活動に及ぼす効果を明らかにすることを目的に研究を行っている。
 さらに、発展途上国の成長に関する問題は、国際経済学における実証研究だけでなく理論的分析についても非常に重要なものであり、1980年代後半以降、活発に研究が行われているといえる。例えば、「なぜ国によって経済成長率に大きな差が生じているのか」、「どのような国内・対外的な要素がその国の経済成長に対してより重要であるのか」、「経済成長率を高めるために政府は果たしてどのような政策を行うべきなのか」といった問題は、各途上国にとって非常に重大な問題であろう。近年、経済成長理論の分野においては、「民間部門における研究開発活動」、「社会資本の蓄積」、および「特許制度の重要性」などが一国の成長に対して非常に大きな影響を及ぼす要因であると広く認識されるようになった。しかし、現状として国際的な経済取引が経済成長にどのような影響を与えるかに関しては、理論的に見て、必ずしもその研究成果が上がっていないといえる。(1990年代初頭には、経済成長と国際貿易に関する研究が盛んに行われていて、「知識の国際的伝播」や「研究開発による動学的比較優位」の重要性などが指摘されていたが、現在は必ずしも大きな進展が見られていないといえよう。)現在、私は上述した要因とともに、「国際間における資本取引の開放度」、「為替レートの変動」、「一国の貿易構造」などといった、経済成長に関する国際的な要因を解明すること、および政府の国際的市場に対する政策が経済成長に与える効果を解明することについても研究を行っている。言い換えると、各国が長期的に高い成長率を実現するためにはどのような経済政策を実施することが必要であるのかという問題に大きな関心を持ち、現在研究中である。
 最後に、上記ような既存の研究テーマに加えて、現在「貿易自由化」問題に関する研究に着手したいと考えている。古くから国際間の貿易に際して、「貿易戦争」と呼ばれる問題が生じてきた。例えば、各国の政府が互いに貿易相手国の輸出を制限するような政策をとることがこの問題に当てはまるが、このような状況において問題となるのは、ある貿易活動を行っている一国が何らかの政策を実行すると、その貿易相手国も同様の政策を実行し、やがて互いに報復的な政策を繰り返すようになるという事実である。一度貿易戦争が生じると、この状況はどんどんエスカレートし、国際貿易に関して望ましい状況から離れてしまうことが知られている。この状況から抜け出すためには、各国が互いに「協調的な特権」を設けてより自由な貿易体制を確立する必要性があるが、これは日頃のニュースなどを見てもおわかりのように、政治的に見ても非常に困難であるといえる。現在WTO(世界貿易機関)等の国際機関により貿易自由化への取り組みがなされているが、その一方では世界各地で二国間・地域間の経済統合の試みが活発化し、その結果FTA(自由貿易協定)の数が急増していることも特徴として挙げられる。このような状況において、望ましい貿易体制とは果たしていかなるものか、あるいはどのような方法で国際貿易の自由化を実現していくべきなのかなどについて理論的に分析する研究が、近年活発に行われている。
 この問題をこれからの研究対象として取り組んでいきたいと考え、現在研究準備をしているところである。