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第4回
「物権法」

副田 隆重



不動産「物権」の安全確実な 取得のためには

「物権」のイメージを持たせる説明から始まる

副田 隆重 そえだ・たかしげ 法学部教授、法律学科。専攻分野は民法。
長期研究テーマは「財産法および家族法の交錯領域、あるいは 財産法としての相続法の検討」。短期研究テーマは「遺言執行 者」など。担当科目はこの他「ミドル演習(民法)」など。


 私が担当する「物権法」(四単位)は、南山大学のカリキュラムでは、民法総論、担保物権法、契約法、家族法などとともに、民法科目の一つを構成する。全体で千ヶ条を超え五つの部分から成る民法の第二編物権編は、財貨の帰属に関する法準則がもっとも集約的に配列された部分と理解されている。ただ、その中でも、抵当権に代表される担保部分は本学では担保物権法(二単位)に委ねられており、物権法の対象は、主としていわゆる物権変動論と呼ばれる部分および所有権に関する部分といえよう。
 物権変動論では、権利取得の優劣が不動産について「不動産登記」により決定されるという民法の原則などが不動産登記のしくみ(これ自体は不動産登記法という特別法の内容であるが)の基本的説明とともに、講義される。日本の民法では、権利たとえば所有権の移転それ自体は意思すなわち契約の効果として生ずるが、そのことを対外的に(当事者間以外で)主張するためには登記が必要である、という意思主義・対抗要件主義が採用されている。不動産をめぐる権利関係をどのようなしくみで公示するか、そうした公示手段と権利取得の効力をどのように関係付けるか、については、諸外国でもさまざまなやり方があり、それらと日本のしくみとを対比して検討する必要がある。また、原則として登記が必要という前掲ルールにもいくつかの例外があり、そうした点も重要である。
 以上からも予想がつくように、物権法の内容は学生諸君にとってはまったく経験のない、かつ、イメージのしにくい領域でもあるため、教える側としてはそれなりに工夫をしている。すなわち、一般に不動産の売買はどのように行なわれているか、を法的な説明は後回しにして、ざっと概観させるため、マイホームを売りたい、買いたいと思ったら、どうするか、という視点から一通りの説明をする。つまり、不動産「物権」とはいえ、当面は不動産「物件」から入っていく方が分かりやすい。そうすると、不動産「物件」の情報(売り・買い)はどうやって手に入れるのか、いわゆる不動産業者・宅建業者はどういう立場で取引に関与し、どのようなサービスを提供するのか、実際の契約書にはどのようなことが書かれているのか等につき、実例を示しながら説明して、ある程度のイメージを持った上で、細かい法的な問題点の検討に入るようにしている。
 民法の中の「物権法」の講義ではあるが、現実には、不動産登記法、宅地建物取引業法などの特別法、司法書士、宅建主任という他の専門家の役割を含めて、不動産取引の安全確保というような視点も肝要である。