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第3回
「カウンセリング的対話」

楠本 和彦



魅力的な対話者をめざして

ひとつの円になりグループスーパーヴィジョンを行う

楠本 和彦 くすもと・かずひこ
人文学部助教授、心理人間学科。専攻分野は臨床心理学。
長期研究テーマは「教育領域における心理臨床的活動」。
短期研究テーマは「青年期、成人期における心理臨床的動」。
担当科目はこの他「人間関係フィールドワーク」など。


 「対話」とは、言葉を単なるコミュニケーションの道具として使用するに止めず、対等な立場で、お互いがお互いの存在に関心をもって向かい合っている関係と言ってよいでしょう。そのような「対話」のもつ意味を考え、その精神を基礎にして、援助的なアプローチの一つである「カウンセリング」をも視野にいれて、自分のありかたや他の人との関係に目を向けようとするのがこの科目です。哲学が専門の中野清教授と臨床心理学が専門の私とのチームティーチングで、授業を運営しています。
 二〇〇二年度春学期の「カウンセリング対話T」では、「対話」、「カウンセリング」、「援助」の三つのテーマについて取り上げました。「対話」に関しては、「対話」という概念と言葉を相手に届けること、内的な対話の一例としての「夢分析」などの講義を行うこととともに、実習を通して「対話」について考えました。「カウンセリング」に関しては、カウンセリング場面のVTRの視聴、カウンセリングの事例検討、コミュニケーションの実習などから、カウンセリングおよび自分の援助的コミュニケーションのありようについて学びました。「援助」に関しては、がん患者への心理的なサポートグループやマザーテレサのドキュメンタリーVTRを材料に、「援助」のポイントや援助する側と受け手との関係などについて、考えました。
 秋学期の「カウンセリング対話U」では、「ミニ試行カウンセリング」を中心としています。これはカウンセラー役とクライエント役を決め、約十五分の相談面接を行い、その録音を逐語録(対話をできるだけ忠実に書きおこした記録)にし、それをもとに、グループスーパーヴィジョン(教師と学生とが逐語録を読み、録音を聴いて、カウンセラー役の応答、人に関わる際のあり方、人間観などについて話し合う)を行うというものです。このような実習を行なうことによって、自分自身の実際の応答から、人と関わる際に大切にしたい考えやありかた、より互いにわかりあえるようなコミュニケーションの仕方などを学ぶことができます。
 最後に、グループスーパーヴィジョンの時の、学生の感想の一部を紹介しましょう。 「沈黙は意識に新しいものが入るための大切なものであると聞いて、ゆっくりと静まる時を自然に持てたらよいと思った」、「カウンセラーは自分の主観のみで判断せず、クライエントの気持ちを多方面から、深く汲みとって、慎重に考えていかねばならないと思った」、「同じ逐語録を読んでも、人により、気になるところが異なっていて、新しい見方に気づくことができた」。