第105回

「株」から何が発想できるか

徳永 俊史


 ゼミを担当して二年目でありゼミの歴史や思い出はもちろん無いし、特徴のある指導哲学も無いので、今のゼミ生やこれから私のゼミを履修する学生に向けたメッセージを書きたいと思います。
 なぜか(?)私は一昨年まで九年間銀行の資産運用に関係した仕事をしていました。そのイメージからか、学生に「株」から何を連想するかと問いかけると、その答えの多くが「危険」「自分に関係ない」というものであることにまず驚かされました。それらの答えが株を否定的に考えているものだからではなく、株を投資の側面からしか見ていないものだからです。したがって、「この科目は将来の資産運用に役に立ちそうだ」と言ってくる学生もいますが、私はあえて授業の最初に、ゼミ生には安易にこのような考えを持たないように言います。
 紹介が遅れましたが、私のゼミは一応「財務論」です。この”一応“は、いい加減なという意味ではなく、とにかく視野を広く持ってもらいたいという気持ちをこめたものです。ゼミでは「株」から発想されることであれば何でも取り組むことにしています。大切なのは、学生が二年間でどれだけ多く発想できるかであり、私は学生がそうできるように指導したいと思っています。したがって、財務論があまり好きでない学生や何をやりたいのかわからない学生(実際そういう学生もいる!!)も受け入れています。何でも学びたいという積極性があれば二年間で大きく成長できると思っています。
 では、少し具体的な話をしたいと思います。私のゼミでは同時に三つのテーマに取り組んでいます。一つ目はゼミらしく私が指定したテキストをグループ単位で報告し議論すること。これだけをしっかりやるという考え方もありますが、あえてあと二つに取り組んでいます。二つ目は副読本の紹介。この目的は、自ら本屋に足を運び、自分で本を探すことです。そして、あるテーマについて自分の視点で考察を深めることを主目的としています。三つ目は株式仮想取引の体験。今年は、大学の枠を越え、同じ目的を持った他大学の学生、高校生、時には個人投資家と競争しました。このときだけは私も学生の競争相手です。この体験の一番の面白さは、たとえノーベル賞を受賞するような人でも国家を揺るがす大損失をしてしまうことがあることです。(今年学生に負けた私の言い訳!!)
 学生には、幅広い視点を持ちながら自主的に行動する中から自分が何をやりたいのか見つけることを要求します。真剣に努力すればやりたいことが必ず見つかります。そうした中、私にとって初めてとなる今年度の卒業論文指導では、企業評価や企業戦略のような誰もが財務論と結びつけられるテーマはもちろん、世界史・人間心理・メディアと結びつけた独創的なテーマまで幅広いものとなりました。学生にとって、当初予想もしなかった視野を持てたことがその後の自信になるはずで、今のゼミ生にはこのような快感を是非味わってもらいたいし、私もそのために努力をしたいと考えています。
(とくなが・としふみ 経営学部助教授 経営学科)