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南山大学ホーム日本語トップ総合案内南山ブレティン184号No.6
南山ブレティン184号
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 私の研究
 
戦争と在外企業資料
岡部 桂史 経営学部経営学科 准教授 岡部 桂史  おかべ・けいし
経営学部経営学科 准教授


専攻分野は日本経営史・日本経済史。
担当科目は「経営史」。
主な著書は『戦前期北米の日本商社−在米接収史料による研究−』(共著 日本経済評論社2013年)、『総合商社の歴史』(共著 関西学 院大学出版会 2011年)。

 私が専門としている日本経営史は、名前の通り「日本」を対象にした歴史研究ですが、現在、私も含めて多くの研究者が資料を求めて海外を飛び回っています。その中で近年、私が力を入れているのが、米国国立公文書館(NARA)所蔵の日本企業(商社や銀行)に関する資料です。
 1934年設立のNARAは米国連邦政府の一機関ですが、なぜ日本企業の資料が保存されているのでしょうか。実はこの資料は、1941年12月の日米開戦の際に米国政府に接収された在外資産の一つなのです。当時、接収された資産には、現金や不動産だけでなく、大量の文書も含まれていました。資産的には無価値でしたが、情報としての価値は高く、接収された日本企業の文書は、米国政府や米軍によって徹底的に分析されました。例えば、三井物産や三菱商事の文書を分析すると、ある工場にアメリカ製工作機械が何台輸出されたのかがわかります。その結果、戦略上、重要な軍需工場と判定されれば、その工場一帯がB29で爆撃されました。
 一部が戦争に利用された大量の企業文書は、戦後に破棄されそうになりますが、ダン・イノウエ上院議員(ハワイ州)らの尽力で、NARAで永久保存されることになります。本来、非公開の内部資料であるはずの企業資料が、全てオープンに閲覧や撮影が可能となり、日本経営史研究は格段に進展しました。同様の資料はオーストラリア国立公文書館などにも保存されています。私自身も大量にある歴史資料の海の中で溺れそうになりますが、着実に実証的な研究を進めていきたいと思っています。
上申書
日中戦争下の1938(昭和13)年に中国の天津支店長が本社の機械部長に発信した上申書。
題名は「時局ト機械取引方針ノ件」。
情報共有のため、北米支店にも転送されました。
資料の保存箱
資料の保存箱。ラベルには「敵性外国人財産管理事務所・第二次世界大戦接収文書」と書かれています。