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南山大学ホーム日本語トップ総合案内南山ブレティン175号No.6
南山ブレティン175号
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 私の研究
 民芸運動にみる「価値の転換」
  濱田 琢司
 
日本民芸館
濱田 琢司 准教授
はまだ・たくじ
人文学部
日本文化学科 准教授
専攻分野は「文化地理学、地域・民俗文化論、工芸史」。
長期研究テーマは
「伝統と地域をめぐる文化研究、手工芸生産の研究、
民芸(運動)の研究」。
主な著書は
『民芸運動と地域文化─民陶産地の文化地理学─』
(単著 思文閣出版 2005)。

 かつて民芸運動という文化運動がありました(一応今も継続中?)。民芸運動は、大正末期に思想家の柳宗悦を中心に始まった、工芸をめぐる運動でした。これは、伝統的な日用雑器に、はじめて美をみいだそうとした運動でした。私が関心を持っているのは、民芸運動の伝統の価値づけの仕方とその影響です。運動が注目した生産品の多くは、近代化とともに、時代遅れの不要品になりつつありました。例えば、かつてせんべい屋のために作られていた陶器の壺は、透明なガラス容器の普及で、これに取って代わられてしまいます。運動は、このせんべい壺のような存在に注目します。それらは、元々の使い方では確かに不要品だ、しかし、古くからの伝統を基礎とした興味深い製品だ、ならば、本来の使用法から切り離して、都会の現代生活で嗜好品として使ったら面白いじゃないかと。民芸運動はこんな風に、
小鹿田焼のせんべい壺
(日本民芸館蔵)
時代遅れになりつつあった様々な工芸品を、旧来の生産と使用の文脈から切り離して、新しい生活のなかにそのまま取り込むことで、モノに新たな意味づけを行ったのでした。「民芸品市場」という新しいマーケットの誕生でした。こ の市場の誕生によって、近代化に乗り遅れていたいくつかの産地は、その後進性ゆえに高い評価を得、現在まで生産を継続させることができるようになりました。 この過程で、民芸運動がみせた「価値の転換」、よく考えると、これは工芸に限らず様々な場でもみられる実践でしょう。ほかにどんな「価値の転換」があるでしょう?民芸運動から派生して、現代の日本社会を対象に、そんなことも考えています。