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南山ブレティン169号
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 私の研究
 言語理論と日本語
阿部 泰明
 
University of Massachusetts,Amherst校、South College
University of Massachusetts,Amherst校、South College
阿部 泰明 教授
あべ・やすあき
人文学部科
日本文化学科 教授
専攻分野は「言語学(理論言語学)、日本語研究」。
長期研究テーマは「普遍文法と日本語の構造」。
短期研究テーマは「日本語のゼロ代名詞」。
主な著書は『意味』(岩波書店、1997年、共著)
『生成言語学入門』(大修館書店、1999年、共著)。

 私は言語学の中でも理論言語学と呼ばれる領域で研究を行ってきている。ここで言う理論言語学とは、生成文法(GenerativeGrammar)と呼ばれる現代言語学での最も大きな潮流であり、つぎのような仮説に基づいた理論のことである:人間言語の仕組みにおいては、生得的に備わっている言語知識(普遍文法UG)と経験(言語資料との接触)の相互作用の結果から個別言語の知識(文法)が形成される。
 日本語は発音、語順、格表示の有無などでは英語などと大きく異なっているが、文法の根幹をなす構文法の仕組みにおいてはかなりの部分で自然言語に共通の特徴を有していることがわかってきている。この発見はある程度抽象化された理論の枠組みの中で初めて達成されるもので、表面的な観察だけでは深い理解が得られない。そのため、理論言語学では抽象化の仕組みを使用するが、これが一部の学生には「数学的」に写るらしい。
 博士論文(University of Massachusetts,Amherst、1985年)においては、モンタギュー文法の枠組みを使用し、とりわけその統語部門の構成基盤であるCatgorialGrammarの仕組みに数学で用いられる「関数の合成(function composition)」の手法を付加することで、対照言語学的に興味深い4つの言語パターンの存在に説明を与える試みを行った。これらの言語パターンは二つの軸に見られる対立に依拠しており、それはSOV型とSVO型の違い(とそれに付随した形態的諸特徴)と使役文における統語的節融合の強さと弱さである。
 統語的現象に関する研究を進める一方で、統語構造と意味構造の境界領域に関する研究も行ってきている。言語研究を始めた初期の段階から強い興味を抱いていた照応現象は、論理的量化子と束縛変項の関係、指示表現と照応表現を繋ぐ表示の理論(指示指標の理論)、事象意味論、テンスとアスペクトなどの研究と深く関係しており、いわゆる論理表示(LF)に関わる問題一般に興味がある。
 最近はかつて研究を行ったことのあるゼロ代名詞の解釈の問題を再度掘り起こしながら、新たな展開を探っている。