私は、金融工学や数理ファイナンスと呼ばれるファイナンスの一分野でデリバティブ(金融派生商品)やリアルオプションの評価を研究しています。しかし、ファイナンスの研究をはじめから志していたわけではなく、大学院時代は理論経済学、特にケインズ以後の不確実性下の不均衡経済動学を研究しようとしていました。残念ながら、85年当時は時間と不確実性を同時に取り扱う経済理論モデルはほとんど知られていませんでした。そのとき、わが国に紹介され始めたばかりのオプション評価理論に出会い、そこで応用されている確率解析の手法に魅せられました。白状しますと、ファイナンスの研究に手を染めたのは、不確実性下の経済動学モデル構築という目的のため、確率解析を多用するファイナンス理論の手法を盗んでやろうという不純な動機からでした。
この研究が縁で、首尾よく経営財務の講義担当者として前任校に職を得ることができましたが、本人はまだ経済学研究者のつもりでいました。ファイナンスに本腰を入れて研究する契機となったのは、94年からの田畑吉雄教授(当時大阪大学教授、現本学ビジネス研究科ビジネス専攻教授)の研究会への参加でした。大阪大学への国内留学を経た数年後、田畑先生から学位取得を勧められ、ようやく腹を括ってファイナンス研究に専心する決意が固まったような次第です。
市場で取引される派生商品の評価にももちろん関心はあるのですが、現在はむしろ市場評価とは無関係なところで契約されるリアルオプションの評価に興味があります。裁定や複製という標準的なデリバティブ評価手法が使えないために、市場で取引されないリアルオプションの評価はかなり難しい問題になるのですが、反対にこれに満足のいく結果が得られれば、非営利契約の評価や経済問題にも応用できるのではないかと考えています。 |