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南山大学ホーム日本語トップ総合案内南山ブレティン164号No.7
南山ブレティン164号
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 私の研究
 新しい中国近現代史像を求めて
中村元哉
 
韓国家族法入門
中村元哉 准教授
なかむら・もとや
外国語学部 アジア学科
准教授
専攻分野は「中国近現代史」「東アジア国際関係論」。
長期研究テーマは「近現代中国および近現代東アジアにおけるリベラリズム思想の受容と展開」。
主な著書は「戦後中国の憲政実施と言論の自由1945-49年」(東京大学出版会 2004年)など。
担当科目は「中国近代史」「中国欧州交流史」など。

 私は東アジア近現代史、とりわけ中国近現代の政治外交史・政治思想史を専門としている。その理由はなぜか。研究の出発点はどこにあるのか。それは、私の場合、1989年6月4日の天安門事件(民主化運動)にある。
 当時15歳だった私にも、社会主義体制が世界で崩壊しつつあることは容易に理解できた。しかし、そうした世界の潮流に逆行するかのように、なぜ隣国の社会主義中国では「反民主的な政治弾圧」がおこなわれ、社会主義体制を(表面的であれ)その後も維持できたのかは謎であった。そこで、大学進学後に、天安門事件とその背景となった現代中国の民主化運動について調べ始めた。
 ところが、その作業中に思わぬ発見があった。それは、社会主義中国が建国される以前の中華民国期(1912-1949年)において、実に多くの民主化運動と自由・人権を尊重しようとする政治活動がおこなわれていた、という事実である。しかも、それらはイギリス・アメリカ・ソ連・日本などの国際情勢とも密接に連動した世界史的な動きでもあった。さらに、1930年代から1940年代に政権を担当していた中国国民党(蒋介石)は、国際情勢を見極めつつ、日中戦争の最中に憲政を準備し、終戦直後にそれを実施していた。
 「中国近現代史にこのような事実が存在するはずがない、だからこそ現代中国になってようやく民主化運動が発生したのだ」と信じきっていた私にとって、それは天地がひっくり返るほどの驚きであった。私の「歪められていた」中国近現代史像は根底から見直しを迫られることになった。
 こうして私は、天安門事件へと続く歴史的な背景に主たる関心を移していった。具体的には、中国国民党がどのように当時の内外情勢を判断しながら憲政を実施したのか、その憲政はなぜ失敗したのか、憲政実施へと向かわせた近代中国のリベラリズム思想とはどのようなものであり、その後の中国・台湾・香港の歴史にいかなる影響を与えたのかを研究していくことにした。私にとって幸いだったのは、こうした新しい研究関心を寛大に受け入れてくださる学術環境が日本国内に整備されていたことと、関連する行政文書(档案)が中国や台湾で続々と公開され始めていたことである。その成果の一端は、拙著『戦後中国の憲政実施と言論の自由1945-49年』(東京大学出版会、2004年)にまとめてある。
 私たちの専門分野は、歴史問題によって情緒的になりがちな日中関係と冷静に向き合うことを宿命付けられている。そのためには、最新の学術研究を通じて近現代中国の「あるがままの姿」を解明し、それを教育の場に客観的に発信していかなければならない。私もそうした緊張関係を背負いつつ研究と教育に専念し、世界でも高く評価されている日本の中国研究を支え続けていきたい。