2006年度は、「民法総論」という講義科目を担当しています。この科目は学生が私法の分野で最初に出会う科目ですので、私法科目一般に対するアレルギーを引きおこさないよう、責任の重さを感じながら臨んでいます。初めて民法を学ぶ学生がスポンジのように知識を吸収していくことを感じられる機会は、私にとって大きなやりがいになっています。
講義では、たとえば、子供が自分の実印を持ち出して勝手に委任状を作成し、代理人を称して土地を売却した場合、それを信じて土地を購入した相手方を保護するのか、勝手に土地を売却されてしまった本人を保護するのか、といった問題を考えます。講義では、こうした法律問題を考えるときに重要なのは、紛争当事者の立場に自分を置いて、どのような法的主張をすべきかを探ることであると強調するようにしています。学生は、ともすると結論を知るだけで満足し、どのような論理構成によってその結論が導かれるのか、その結論によって守られるべき利益とは何なのかといったことを見落としがちです。しかし、それでは本当に法律を学んだことにはならず、新たな問題に解決を与えるための思考力も養われないでしょう。
多人数の講義科目だけでなく演習科目も担当していますが、学生の思考力を養うためには、演習こそ恰好の舞台であるといえます。たとえば、2年次生対象の「ミドル演習」では、家族法を題材として法律相談形式の学習機会を提供しています。紛争当事者の一方から相談を受けたというかたちで問題を投げかけると、学生は自然に、相談者の利益を守るための法律構成を考えるようになります。そうする中で、難解な条文を理解しようとし、自分の主張を裏付ける学説・判例を探そうとします。学生が自ら思考し始める姿に、私自身、学ぶことの多い機会となっています。 |