ご存知のように、近年、タイや韓国、中国などの“東アジア地域”はめざましい発展を遂げていますが、開発経済学の分野でも「なぜ、東アジアは急速に発展できたのか」という問いが注目されてきました。従来、「貧困のもとでは不利な条件が重なり“悪循環”に陥りやすい」という“貧困の罠”が指摘され、その脱出のあり方を探ることが重要な課題であったからです。
そして東アジアの経験から、「“罠の脱出”には“後発性の利益”(遅れて出発した国は、先発国が蓄積した知識や技術を利用できる)の実現がポイントとなる」と考えられるようになりました。これらの国々が、繊維や家電、IT機器などで先進国からの技術移転を進め、輸出や雇用を拡大しながら発展したことや、その際、日本企業などが行う“直接投資”(海外投資活動のうち、主体的な経営参加を目的とするもの)が大きな役割を果たしたことが明らかとなってきたのです。
このような中、開発経済学では、(1)直接投資はどう行われ、後発性利益の実現にいかなる役割を果たすのか、(2)直接投資の活用にあたり、途上国はどのような政策を進めるべきなのか、等の議論がつづいています。
私も、日本企業の直接投資に注目しながら、彼らが技術移転や人材育成で果たす役割について研究を進めてきました。最近は、インドなど後発国の追い上げや、華僑系/地場系企業が台頭する中、アジアに進出した日本企業にとって“活動内容の高度化”を進めることが喫緊の課題となっています。従来、「日本企業は、高度技術の移転や現地人材の登用に消極的」と言われがちでしたが、最近では、「“長期定着性”という日本企業の特徴」と「“流動可能性”という現地の特徴」の両者に配慮した興味深い取り組みがみられます。これらの動きに注目しながら、さらに研究を深めたく思っています。
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