南山大学
JapaneseEnglish
南山大学ホーム日本語トップ総合案内広報・コミュニケーション南山ブレティン153号No.8
南山ブレティン153号
1 - 2 - 3 - 4 - 5 - 6 - 7 - 8 - 9 - 10 - 11 
 私の研究
 政治変動の体系論的要因解析
野口 博史
 
北部ベトナムの一村落
野口助教授 画像
専攻分野は「政治学・東南アジア地域研究」。
長期研究テーマは「政治体系論・政治変動論」。
主な論文は「環境変動と適応」『国際学論集』、「中国インドシナ同盟と第三次インドシナ戦争」『国際学論集』、「ポル・ポト政権の連繋政治」『国際学論集』。
担当科目は『政治行動論』など。
のぐち・ひろし
総合政策学部助教授
総合政策学科
 

 私の研究領域は計量的手法を用いた比較政治行動論です。主題としては現代アジアにおける重要な歴史事件を選択し、その体系論的要因解明を試みてきました。
 大学院生時代に取り組んだ主題は1970年代にカンボジアで成立したポル・ポト政権について、なぜこうした政権が成立したか、なぜ国民の2割近くを死に追いやるような政策を行ったのか、なぜ無謀な国境戦争を引き起こして4年足らずで崩壊したかについての計量的分析・検討でした。政府・党指導者の相互訪問や政治的出来事の事件データ・指導者の演説や地下放送の内容分析データを作成・解析し、米中接近・ベトナム和平といった大国間緊張緩和がポル・ポトらカンボジア共産党の価値・信条体系の非妥協化・対外不信をもたらしたとの結論を得ました。
 また、ソ連・中国・ベトナムの各共産主義政党とカンボジア共産党のイデオロギーを構成要素・構造水準で比較することにより、カンボジア共産党が中枢への情報入力がより少ないイデオロギー構造を持っていることが判りました。これらにより、彼らの極端な政策をもたらした原因が指導者の性格やカンボジア文化の独自性によるのではなく、特定の環境に対して特定の組織的適応を行えば、同時に特定のイデオロギー構造を持てば、どのような政治組織も類似した政策をとり得る蓋然性が示されました。
 1990年代後半には60〜70年代の米国公文書の公開が進み、また同時期のベトナム文献も公刊され始めましたので、300万を超える死者をもたらしたベトナム戦争の推移を決定した要因解析に着手しました。この研究はまだ継続中ですが、ベトナム労働党指導部の環境適応様態変化・物質資源の動員や輸送量の2要因が最も重要なようです。
 3年前、南山大学に赴任してからは、社会生活の安定に影響を与える政治組織の変動に関する比較事例研究に取り組みつつあります。中国で発生した「文化大革命」と昭和前期日本の「昭和ファシズム」がいずれも対外脅威認識の強化に端を発しつつ、官僚機構の「下克上」を伴った「民主化」の結果、機構内派閥数を増大させ、その対立を激化させながらその政策を不安定化させていくといった、政治変動過程・要因の類型化を行いつつあります。
 一方、言語を主要媒体とする不平等な人間関係の総体である政治体系を全体として把握するためには、統治者ばかりでなく被統治者をも検討する必要があります。私は1994年から現在にかけて、北部ベトナムの一村落における国際総合調査に参加してきました。ベトナム現代史が村落社会に与えた影響、村落社会構造中における末端政治指導者の社会・経済的位置、末端行政機関の民主化政策の集落水準での受容等が主題です。
 また、外部環境変動に対する組織・社会の適応様態は、一定の領域における時間的変化の地域的差異を生むものですから、環境変動と適応様態の地域性を検討するには空間的属性を与え得る地域データの開発を行う必要があります。このため、2004年からカンボジアにおいて、パッヘ研究奨励金I−A−1を受給して、いままで未開拓であった広域調査方法論の開発を同国芸術大学と共同で開始しました。2005年からは本学人文学部・黒沢浩助教授等の参加を得て今後も継続する予定です。酷暑下での国際・学際・移動調査という過酷さですが、今・此処こそが私のいるべき場所と感じられる楽しい調査です。