南山大学

 

学長方針

I.基本姿勢

2012年度の学長方針は、これまでと同様に、基本姿勢を述べることから始めます。今年の基本姿勢でも、私の前任者や私自身が使ってきたキーフレーズに表現されるカトリック大学としての南山の伝統から大きく逸脱するつもりはありません。「南山の特長(Nanzan Difference)」を維持し促進することは、依然として、「絶えざる自己改革」を継続し、学生の「個の力」を「世界の力」にし、南山大学を「国境のない学びの場」にしていくことに他なりません。この「国境のない学びの場」において私たちは、昨年も述べた「預言者的対話」の精神に基づいて、人間の価値に関わる開かれた対話とその積極的な促進を、緊張感を持って創造的に実践していかなければなりません。
私は、ここで継続性を強調することで、単に過去のメッセージが現在も有効であることを繰り返し述べようとしているわけではありません。多くの事柄が変化しつつある現在、むしろ私たちは何が本当に大切なのかを見極めて、それをどのように促進していくべきなのかを自分自身に問い直さなければなりません。そして今日のグローバル化した社会で大学を運営するときに、2000年にわたるカトリック教会の伝統的教義の核心を、どのようにして現代に通じるものとして活かしていくのかについても考えなければなりません。
今年は、カトリック教会の自己認識に深くかつ継続的な影響を与えてきた第2バチカン公会議の開幕から50周年にあたります。会議の公式な開幕は1962年10月11日で、ヨハネ23世によって主宰されました。彼は「aggiornamento(教会刷新)」というキーフレーズを使って、会議の主旨を説明しました。その後この「教会刷新」という言葉は、ローマカトリック教会が現代においていかなる役割を担い、社会といかなる関係を持つべきかを示すようになりました。
私は、ヨハネ23世の「教会刷新」というキーフレーズが、カトリック大学の使命と役割を明確にしてくれると思います。このキーフレーズを単に文字どおりに解釈してしまうと、英語でいう「bringing up to date(刷新)」の翻訳にすぎないようにみえてしまいます。しかし、カトリック教会はこのキーフレーズを「aggiornamento」というイタリア語のまま継続的に使用してきました。このことは、単に制度を現状に即して改めるだけでなく、改革の精神と開かれた心をもって自己を理解し、与えられた任務を批判的に検証することをも示しているのです。したがって「教会刷新」の主眼は、伝統的な行為・思考を脅かす新しい思考を否定することにあるのでもなく、刻々と変化する環境のなかで時代の流れにまかせることにあるのでもありません。「教会刷新」が求めているのは、急速に変化しつつある環境の中で、前進しながらもバランスを維持することにほかなりません。
日本の高等教育機関にとって、近い将来の大きな環境変化の一つは、新入生の大部分を占める高校卒業者の著しい減少です。この不可避な変化を注意深く捉え直してみると、南山大学のすべての将来プランを根本的に見つめなおす必要性を認識できます。しかし、志願者を増加させるためだけに新しいアプローチを作り出しても、それはカトリック大学としての南山の使命を十分に果たしているとはいえません。
南山大学の教育カリキュラムでは、すべての学生に学際的な必修科目の履修を求めています。私は履修の選択肢が一層広がることを望んでいます。新たに作った、英語で授業を行う「国際科目群」の科目を追加することを検討してください。さらには、学際的な科目を「国際科目群」と同様に英語で提供することも検討してください。これに加えて、我々は、多様な国籍やバックグランドを持った学生たちがクラスの中で互いに刺激しあう「国境のない学びの場」に、より積極的に身を置くよう学生たちを促していかなければなりません。その過程において、秋季入学の議論も進めていく必要があります。
今年の基本姿勢における私のビジョンを一言で表すなら、それは「Choice(選択)」です。具体的には学生と教職員に対し、大学としての選択肢をより多く提供することです。これは南山のモットーである「人間の尊厳のために」という言葉の中に簡潔に表現されていることですが、選択肢が増えることは提供する側、利用する側の双方に責任が増すことを意味します。こうした選択肢作りへの意欲的な取り組みをお願いします。成功したかどうかの最終的な判断は、その時代の風潮に乗った選択をしたかどうかではなく、大学としての「aggiornamento」を成し遂げてきたかどうかにかかっているのです。大切なことは、本質を見失わずに教育研究を刷新することにあるのです。

II.最重要課題

1.学生の視点に立った国際化の推進
昨年度に掲げた「国境のない学びの場」の実現に向けて、今年度は「国際科目群」の運用と外国人留学生別科のサマープログラムが実施されます。
「国際科目群」では、名古屋キャンパス32科目、瀬戸キャンパス11科目の計43科目が開講され、24単位以上を取得した学生には、「Nanzan International Certificate」という証明を発行します。今後も、さらに同科目群を充実させていきたいと思います。「国際科目群」は、通常の語学の授業とは異なり、英語で学ぶことによって、新たな理解を得ることができる科目を中心に編成しています。語学力はもちろん、専門的にも高い水準を維持した授業を行い、「Nanzan International Certificate」が真に価値のある証明となることを目指します。
外国人留学生別科(CJS)ではサマープログラムの実施に加えて、2012年9月からは、科目の個別選択が可能となる新カリキュラムが導入されます。これらによって、留学生別科と学部・大学院の授業の相互連携の可能性が高まります。「国際科目群」にも、留学生別科との乗り入れ科目が含まれていますが、それ以外にも、別科生と大学院生・学部生が一緒に授業を受ける機会が増えるでしょう。
以上に加えて、学生にとっての国際化がどのような意味を持つのか、ということについても改めて考えておく必要があるでしょう。「国境のない学びの場」への取り組みは、グランドデザインでかかげたキーフレーズ「個の力を、世界の力に。」に現れているように、深い他者理解と高い国際力を有した「個の力」を育てることにあります。「国際科目群」は、その実現のための選択肢の一つとなりますが、今後は、そうした選択肢の幅を広げつつ、同時に、学生には、責任感を持って主体的な選択を行うように教育・指導していく必要があります。各学科・専攻においては、学生の視点に立った国際化を念頭に置いてカリキュラムを再検討してください。共通教育においても、以上をしっかりと見据えたカリキュラムの検討を引続きお願いします。
2.「国境のない学びの場」のさらなる発展
昨年度から秋季入学が全国的に話題になっています。この実施による影響は未知数で多くの問題・課題があることも事実ですが、学生・教員の国際間交流が活発化する可能性は大きいと思います。本学では、すでに総合政策学部において9月入学の制度を、留学生を対象に一部導入しておりますが、その長所・短所を詳細に検討しながら、全学的な秋季入学実施の可能性を前向きに検討していきます。秋季入学への移行は、入学式の彩を桜から紅葉に変えることではなく、また異なる学年暦のなかでこれまでと同じ活動を続ければよいのでもありません。この単純にみえる変化は、実際にはクレイトン・クリステンセンが「破壊的イノベーション」と呼んだ状況に近いのではないかと私は考えています。学年暦を変えるに際しては、留学生を含めたすべての学生と教職員に対して、より広範で刺激的な選択肢をどのように提供できるかを考えなければなりません。
秋季入学導入の可否にかかわらず、国際的な人的交流の推進に継続的に取り組みます。南山大学では、1年間の留学期間があっても、4年間で卒業できる留学制度が整備されていますが、この制度を活用して留学できる学生数は限られています。この点の改善については、以前より検討を続けておりますが、今年度も継続しての検討をお願いします。
「国境のない学びの場」の実現には、外国人留学生別科だけではなく、学部・大学院への留学や教員交換も推進せねばなりません。大学院については、大学院同士の学生・教員の交換を促進するための制度を検討します。多くの留学生を受け入れるためには、住居の問題も重要になるので、民間施設を含めた留学生用アパートのあり方について総合的に検討していきます。教員の国際間交流については、フィリピンのサン・カルロス大学からの教員派遣が今年度実施される予定です。今後、こうした取り組みを拡充させていく予定です。国連アカデミック・インパクトへの参加等、大学全体としても、国際化推進の様々な取り組みを実施していきます。同時に、各学科・専攻においても、国際化推進事業へのより積極的な取り組みをお願いします。

III.将来構想

1.魅力ある南山大学
研究機関として魅力ある南山大学にするためには、教員がそれぞれの研究活動を活発に行うことに加えて、専門性の高い大学・大学院の充実が急務です。その一環として、数理情報研究科を情報理工学部と連動した研究科へと改組します。より魅力的な社会科学系大学院を目指し、経済学研究科、ビジネス研究科、総合政策研究科の統合・再編も視野に入れて、そのあり方を議論していきます。
短期大学部が2年目を迎え、初めての卒業生を送り出します。前身の南山短期大学は、これまで英語教育に関して様々な取り組みを実践してきました。今後は、さらに魅力のある学部としてどうあるべきかを、他の学部・研究科との連携も視野に入れて、継続的に議論する必要があります。
2.南山の一貫教育
今年度、初めて南山小学校の卒業生が南山中学校へ進学しました。小学校から大学院までの一貫教育の体制の下、南山学園としての役割が機能しつつあります。
大学は、学園のリーダーであり、学園の教育を受けた学生を社会に輩出する役割を担っています。南山学園の一貫教育を経た学生の特長を生かせるような大学の教育体制を模索したいと思います。昨年度実施した学園内推薦入学審査の変更を踏まえて、今年度は各単位校とのさらに密接な連携の可能性を探ります。
3.キャンパス整備
名古屋キャンパスの大規模施設整備事業としては、2009年度に大学会館を取り壊し、2011年3月、R棟を建設しました。今年度は、引き続き、学生募集の観点から上記の大学院改組を含めた学部・学科改組と2キャンパス体制のあり方を将来構想委員会のもと検討していきます。この際、環境に配慮した緑あふれる新たなキャンパスづくりを目指します。

IV.教育・研究

1.2013年度認証評価受審に向けて
日本の大学は、7年以内(専門職大学院は5年以内)に1度、外部機関による認証評価を受けることが法的に義務づけられています。本学では2013年度に認証評価を受審するために昨年度からその準備を進めてきましたが、今年度は「点検・評価報告書」を完成させ、外部の認証評価機関に提出しなければなりません。
2013年度に受審する認証評価では、大学自身が大学の質を保証する「内部質保証」という考えが重視され、自己点検・評価・改善のためのメカニズムとしてPDCA (Plan-Do-Check-Action)サイクルが有機的に機能しているかどうかが審査されます。つまり「点検・評価報告書」は、単なる活動実態報告書ではなく改善行動計画書としての意味を持つものであることが求められます。すなわち、大学全体・学部・学科・研究科・部署ごとに定めた目標と計画を、その達成状況と比較し、不断の質的向上につなげることが求められているのです。
大学の「内部質保証」は教育内容、研究業績、管理運営のあらゆる面で審査されます。本学はすでに授業評価、教員評価、FD・SD活動を積極的に推進していますが、すべての教職員はそうした取り組みがPDCAサイクルに沿った「内部質保証」の向上に資するものであるとの認識をさらに深めてください。
2.授業内容の充実
昨年度から、講義回数の1学期15回化とテスト期間の1週間化が導入されました。そのための学年暦は整備できましたが、授業内容について十分な議論を重ねることができませんでした。今後は実りある15回の授業にするために、各学部・研究科で授業内容の充実・改善のための検討をお願いします。
学部改組より10余年が経過しました。この間を振り返ると、従来のカリキュラムでは対応できない課題も明らかになりつつあります。今年度導入された「国際科目群」等は国際化の推進に効果のあるカリキュラムです。こうした南山の特色あるカリキュラムをさらに発展させ、授業内容の充実に役立ててください。
3.学生支援の充実
R棟の完成と同時に国際教育センター、英語教育センター、ワールドプラザ等が移転し、これまで以上に学生の語学教育や、留学に関する支援機能が充実しました。2009年度に採択された学生支援GPが昨年度で終了しましたが、それらのプログラムで設置された名古屋キャンパスのセントルム、瀬戸キャンパスのアウルラリアは今後も継続し、学生支援活動を行っていきます。
学生の情報教育環境をさらに充実させることも重要です。近年、書籍のデジタル化技術が急速に進展し、ネットワークを活用した図書館相互利用の可能性も広がってきました。一方で、ソーシャルメディアの発展によって、情報リテラシーの重要性も高まっています。こうしたことを踏まえて、以前から検討してきた学術情報センター設置に向けて議論を再開したいと思います。デジタル化資料の集積とともに、全学規模での情報教育および情報共有を可能とするような組織として近いうちに実現することを期待します。
4.競争的外部資金の獲得
本学からの申請で、文部科学省研究・教育拠点形成事業助成等において、2011年度も新規単独採択された事業はありませんでした。この結果に危機感を抱いています。近年、大学の教育・研究評価においては、競争的外部資金の件数や金額が重要な指標の一つとなっています。その意味においても、上記助成に加えて、科研費等の外部資金の積極的な獲得に向けたさらなる努力が必要であると考えます。大学としてもその支援体制を見直す必要性を感じています。

V.社会貢献と産学連携

昨年は、東日本大震災や庄内川の氾濫等、多くの自然災害がありました。大学にとっても有事において地域のなかでどのような役割を果たすかは重要な問題です。地域に根ざした総合大学として、本学の役割も小さくはありません。こうした危機管理への取り組みは、学園全体で考えていかなければならない課題でもありますが、大学としても地域社会との連携をさらに進めていきます。
2010 年3月より進めてきた南山大学人類学博物館・明治大学博物館連携事業では、継続的に合同でワークショップやシンポジウムを開催し、2012年1月には、明治大学博物館で本学人類学博物館の収蔵品を展示する企画が実施されました。今年度は、2013年2月末からの予定で、名古屋市博物館を会場とし、合同展が企画されています。これらの企画によって、学内資産の公開を通して地域に貢献するとともに、2013 年度にR 棟に移設、拡充される人類学博物館を引き続き広報していきます。
本学ではこれまで国立大学法人を含む他大学や企業との連携を推進してきました。本学と企業との連携では、昨年度、名古屋銀行と数理情報研究科、法務研究科、ビジネス研究科の間で銀行顧客と本学研究科との共同研究・商品開発を念頭においた産学連携の協定書が締結されました。今年度もさらなる連携の強化をお願いいたします。

VI. 入試・就職

1.入試
2012年度の一般入試、センター50、センター100[前期A・B][後期]をあわせた延べ志願者数は、昨年度の20,329名に比べて172名減の20,157名でした。センター100[前期B]の導入の効果等もあり、昨年度より減少幅は小さくなりましたが、2年連続で志願者数を減らしました。18歳人口の減少や日本社会の経済状況等を考えると、学生募集の難しさは、今後も変わりません。志願者確保のために、複数学部を対象とした統一試験の導入等、入試制度の多様化や、推薦枠の見直し等を行います。
2.就職
就職については、今年度も大変厳しい状況が続くことが予想されます。こうした状況を受けて、学生のみならず保護者からも、就職支援の充実についての要望が大きくなっており、重要度が年々高まっています。
日本経済団体連合会が広報活動と選考活動を前年より2ヶ月遅く開始することを決め、今年度卒業生より就職活動の実質的なスタートは、3年次の12月となりました。それにともなって、就職支援プログラムとキャリアサポートプログラムの整理・再編が必要となると考えます。そうしたことからすれば、就職委員会とキャリアサポート委員会の統合といったことも視野に入れる必要があります。キャリア支援室には、これまで以上に、細やかな対応とより詳細な状況の把握をお願いします。同時に、各学部そして教員個々もキャリア支援ならびに就職支援に積極的に協力し、大学卒業者に求められる主体性・コミュニケーション能力・考える力の養成に関わることをお願いします。

VII. 広報

志願者の減少傾向が続くなか、大学広報の役割が、ますます重要になっています。昨年度は、新たな試みとして、インターネットを活用した「Nanzan Web Live」を実施しました。また、上智大学との合同説明会のほか、継続事業についても、順調に実施され、一定の成果を得ました。本年度は、南山大学の外国語の過去問題を組み込んだスマートフォン用の広報アプリケーションも開発されます。そのほか、ディズニー国際カレッジ・プログラム等、受験生にとって魅力的な内容をアピールしていきます。
志願者減少の中、広報戦略のあり方について、入試制度の改革、南山大学グッズの開発等とともに、より効果的な方策を検討します。就職力を上手く広報に取り込んでいくことも必要です。昨年度、就職・キャリア・広報の各委員長等で組織した就職力PRワーキンググループを拡充し、より積極的な広報を検討します。さらに、国際的広報の観点から、英語版のWebページを日本語版と同程度の内容に拡充します。
教職員一人ひとりの研究・教育の実践が、大学広報の一端を担っていることを自覚し、より魅力ある南山大学をアピールできるようにしてください。