戦後、右肩上がりで上昇を続けてきたわが国の経済は、90年代に到って、それまで経験したことがないほどの大きな危機に直面しました。いわゆる金融危機です。銀行の不倒神話は崩れ、不良債権の累積にあえぐ銀行のもとで経済は失速し、国民に犠牲を強いるゼロ金利政策が長期間採用されました。この金融危機の経験は、わが国の金融行政のあり方に重大な再考を迫り、その結果、それまでの不透明で恣意的な護送船団行政は、ルール重視の非裁量的な行政スタイルへと大きく方向転換したといわれています。たしかにマスコミでも、近年の金融庁による銀行規制や監督は、官僚の恣意的な判断ではなく、ルールに基づく指導に替わったかのように報道されています。しかし、そうした見方は本当に正しいのでしょうか。金融行政は、その性質上、経済だけでなく政治の世界からの影響を受けざるを得ません。この講演では、そうした観点から、金融行政を展望してみたいと思います。
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