かつて人間がいかに生きるべきかを考えた時、超越的な「あの世」の存在を抜きにして語れなかった。この世を嫌悪し、あの世は完全なすばらしい世界と捉える二元論が一般的であった。しかし、合理的思惟を基本とする近代に入るや、「あの世」の存在は否定されはじめた。にもかかわらず、近代は、人間社会の理想を水平的に歴史の彼方に置き、今度は別のユートピア「あの世」(技術に支えられた明るいニヒリズム)の実現に専念し、相変わらず、いまここで生きることの意義を疎かにしている。人間の尊厳の価値は、あの世ではなく自分たちの存在しているこの世を十分に生き、人生の味を味わうことにある。その「今ここにある」ことに、全くの不思議を体感するとき(ここに神の姿がよぎる)、自ずと、生きることへの愛惜が生じ、またそう感じうる「人間に生まれている」ことに驚きを感じる。
自分たちが現在存在していることへの稀有の「ありがたさ」(万博テーマの一つ:月から地球を眺めた気分)に気づいた時、人間は生きていることが最高のごちそうと思うだろう。「人生二度なし」と言われるように二度とない人生を生きるには、無限の生命の流れの中の一端に自分がいるということを忘れてはいけない。自分を生んでくれた先祖がいるから人間としての自分が存在している。その人たちに感謝する心を持ち続けながら後世まで命を伝え、国を伝えていくことが人間のみに与えられた最高の尊厳であると考える。万博のテーマ・ソング「ココロツタエ」、のみならず、イノチツタエ、クニツタエへは人間の尊厳を考える上で基礎になる。
( 取材:総合政策学部 3年 大宮あゆみ) |