南山大学

 
人間の尊厳科目 連続講演会  第6回 (7月29日実施) 高橋教授
「人が在る」にこめられた意味
 ― 古典に導かれて
高橋広次 教授
法科大学院  専門分野: 法哲学

  かつて人間がいかに生きるべきかを考えた時、超越的な「あの世」の存在を抜きにして語れなかった。この世を嫌悪し、あの世は完全なすばらしい世界と捉える二元論が一般的であった。しかし、合理的思惟を基本とする近代に入るや、「あの世」の存在は否定されはじめた。にもかかわらず、近代は、人間社会の理想を水平的に歴史の彼方に置き、今度は別のユートピア「あの世」(技術に支えられた明るいニヒリズム)の実現に専念し、相変わらず、いまここで生きることの意義を疎かにしている。人間の尊厳の価値は、あの世ではなく自分たちの存在しているこの世を十分に生き、人生の味を味わうことにある。その「今ここにある」ことに、全くの不思議を体感するとき(ここに神の姿がよぎる)、自ずと、生きることへの愛惜が生じ、またそう感じうる「人間に生まれている」ことに驚きを感じる。

  自分たちが現在存在していることへの稀有の「ありがたさ」(万博テーマの一つ:月から地球を眺めた気分)に気づいた時、人間は生きていることが最高のごちそうと思うだろう。「人生二度なし」と言われるように二度とない人生を生きるには、無限の生命の流れの中の一端に自分がいるということを忘れてはいけない。自分を生んでくれた先祖がいるから人間としての自分が存在している。その人たちに感謝する心を持ち続けながら後世まで命を伝え、国を伝えていくことが人間のみに与えられた最高の尊厳であると考える。万博のテーマ・ソング「ココロツタエ」、のみならず、イノチツタエ、クニツタエへは人間の尊厳を考える上で基礎になる。

( 取材:総合政策学部 3年 大宮あゆみ)



 
皆さんに熱心に聴いていただいて本当に嬉しく思います。入場者もたくさんで良かったです。雰囲気も静かで話しやすく、もっとお話ししたかったですね。


 
難しい話でした。中学で古事記を教えていたのですが先生のおっしゃるところまで深く読みこんでいなかったので新しい発見でした。心、命、国を伝えて世界がどんどん広がっていき感動しました。また同時に元気も頂きました。頑張って私たちも心伝え、命伝え、国を伝えていこうと思います。(中学校教諭の方)


 
  • 森信三『修身教授録』(致知出版社、1989年)
    18歳向けに書いてある本なので読みやすいと思います。
    1回では理解するのが難しいかもしれませんが、それだけ内容の深い本です。
  • 古東哲明『他界からのまなざしー臨生の思想』(講談社選書メチエ、2005年)
    哲学に興味のある人は面白いと思います。