南山大学

 
人間の尊厳科目 連続講演会  第4回 (6月11日実施) シーゲル助教授
21世紀における人類に求められる
価値基準を考える
マイケル・シーゲル 助教授
総合政策学部  専門分野:神学(宣教学・社会倫理) 

  講演は、古本屋で偶然見つけた一冊の本の話から始まる。1965年、イギリスの歴史家サミュエル・リリーが上梓した『Men, Machines and History(人間、機械、及び歴史)』。その最後の章でリリーは40年後の世界を、科学技術と経済の発展により世界は富み、戦争や社会階級は不要になる。そして人々の時間や人生は経済活動以外の有意義かつ創造的な活動に多く費やされるであろうと想像する。40年後にあたる今にすればそれは現実に程遠く、楽観的な展望であるが、これが当時の一般的な見解であった。

  現代社会は、近代から現代にかけてのヨーロッパ型社会が世界に広まったものである。その時代に起こった植民地主義、資本主義、民主主義、そして産業革命と科学の発展。それらの価値観が世界に広まり、世界規模で消費や競争、利潤追求が行われたことで生活水準は上がり、平均寿命が延びるなど様々な恩恵を得ている。その反面、かつて美徳とされた倹約や協調、自己犠牲の精神はあまり重視されなくなり、また現在の利便さが人間同士、そして人間と自然との距離を遠ざけている。21世紀初頭に起きた9.11事件やスマトラ沖地震・津波、未成年による犯罪および無防備な子供に対する犯罪などはこれらを具現した事件の一部といえる。

  21世紀は、温暖化、汚染、資源の枯渇などの環境問題そして宗教、文化圏の衝突、枯渇していく資源をめぐる戦争など、人類の生存に関わる様々な問題を抱えている。これらの問題に取り組むための指針として、資源の限界に見合った循環型社会の取り戻し、他の人間や人間関係の重要性の再認識、自然環境との共生などが挙げられた。
 今の時代に求められる新しい価値基準の確立。そして個人レベルでの問題意識と自覚。それらは問題解決の糸口のみならず、真の豊かさの追求にも通じるように思われた。