齋藤 衛
職名: 教授
専門分野: 「言語学」(理論言語学、文法理論)
主要著書・論文:
"On the Nature of Proper Government" (共著), Linguistic Inquiry 14, MIT Press, 1984.
"Scrambling as Semantically Vacuous A'-movement," Alternative Conceptions of Phrase Structure, University of Chicago Press, 1989.
"Additional-Wh Effects and the Adjunction Site Theory," Journal of East Asian Linguistics 3, Kluwer Academic Publishers, 1994.
担当科目: 「知識・言語と情報社会」、「言語学入門」、「言語論」、「言語と知識」、 「人類文化学特殊講義」、「人類文化学演習」
<<言語を通して人間を考える>>
人が人であるゆえんのひとつが「言語」にあります。言語学は、言語を通して、人間を研究する学問分野です。以下、言語学の対象と目的を簡単に紹介します。
(1) 言語は、人間のもつ知識である。
人間は、文法に基づいて、言語を使用します。そして通常、母国語の文法は、5才前後ですでに獲得されていると言われています。例えば、私達は、五段活用動詞と一段活用動詞の違いを学校で習いましたが、小学校に入学する前から、動詞を正しく活用させて使っていたのです。私達が、そして5才児が頭の中にもっている動詞活用の文法とは、どのようなものなのでしょうか。言語学は、教科書に書かれている文法ではなく、人間が実際に頭の中にもっている文法を研究対象としています。
(2) 英文法も日本語文法も、ほとんど同じものである。
文法を人間がもっている知識として研究していくと、様々なことがわかってきます。「ら抜き言葉」の文法は、「ふつうの日本語」の文法を少しだけ変えて、より一貫性をもたせたものです。アメリカの「標準英語」と「黒人英語」の違いも、ちょっとした文法上の相違として説明できます。さらに文法を詳細にみていきますと、日本語と英語のように、非常に異なるようにみえる言語も、実は、文法は、ほぼ同一であることが明らかになります。「ちょっとした文法上の違い」が、文法体系の根本的なところにあるため、日本語と英語は、表面上大きく違ってみえるのです。こうした「ちょっとした違い」を正確に記述することも、言語学の重要な目的のひとつです。
(3) 人間言語の文法は、種に固有のものである。
人類学者でもあるジョセフ・グリーンバーグ氏らの研究によって、人間の言語は、大枠において共通の文法をもち、バリエーションは、ごく限られた範囲内でしかみられないことが示唆されています。では、なぜ「人間に共通の文法」があるのでしょうか。この問いは、視覚において、人が皆、空間を二次元でも四次元でもなく、三次元としてとらえるのはなぜかという問いに類似しています。これは、「論理的必然性」や「学習の成果」としては説明できません。答えは、広い意味での生物学に求められます。現代言語学は、「人間に共通の文法」を解明することによって、究極的には、人間の脳の研究に貢献することをめざしているのです。email: saito@nanzan-u.ac.jp